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メンバー達はタカチホにてシキガミ戦の最後の調整を行うべく休息をとっていた。
一人学生寮にいたナーシャの後ろから、ロビンがそっと声をかけていた。
ロビン「ナーシャ、どうした?」
ナーシャ「ロビン……何よ、解散の時言わなかった? ワタシに声掛けるなって。」
ロビン「言われたけど、2人きりで話せる機会なんてなかなかないから。」
ナーシャ「口説きにでもきたわけ? あいにくそんなの受け付けてないの。」
ロビン「違う。」
ナーシャ「……いつもはもっと軽い返事なのに。そういえば、あの話をした後からずっと黙り込んでたわよね。どうしたの?」
ロビン「やめた理由、嘘だろ?」
ナーシャ「!?」
ロビン「あわない、だけでやめるような、そんな人じゃないよ、ナーシャは。」
ナーシャ「とことんまであわないと思ったんだから……」
ロビン「それも理由の一つなんだろうけど。もっと別にあるだろ? だから話しやすいようわざわざ2人きりのタイミングを計ったんだけどな。」
ナーシャ「……そうよ。」
ロビン「そこも、ゆづきさんと一緒の理由、とか?」
ナーシャ「……なんでそう思ったのよ。」
ロビン「最初に、ゆづきさんと同じ境遇、ってところでね。いい所のお嬢様、ぐらいまでならあんな言い方しないだろ?」
ナーシャ「残念ながら半分外れ。ただし、半分は正解。許婚がいるってのは本当よ。でもそこから逃げたわけじゃない。きっぱり断ったわ。」
ロビン「じゃあなんでプリシアナに?」
ナーシャ「……はぁ、なんで気づいたのがあんたなのよ。あんたが一番ショック受ける内容でしょうに……」
ロビン「大丈夫、振られるのは慣れてる。」
ナーシャ「そういやワタシで71人目だっけ? ……確かに、慣れてそうよね。」
ロビン「それはプリシアナに入学してからの数。正確には72人目。」
ナーシャ「……? ちょっとまって、貴方最初からナンパ師だったわけじゃないの?」
ロビン「一番思ってた子に振られちまって……一人に絞るからこんなになるんだって、そう思って……照れくさいから、内緒にしてくれよ?」
ナーシャ「なるほど。やけっぱちだったわけね。……ワタシとおんなじ。」
ロビン「?」
ナーシャ「ワタシね、ドラッケンで運命の人、見つけたの。だけどその人は、ワタシのせいでドラッケンから追放されちゃった。」
ロビン「え?」
ナーシャ「ワタシ、許婚もそうだけど家自体が気に入らなかったのよ。だからたびたび家を抜け出しては連れ戻されてというのが続いてた。」
ロビン「お、おてんばなことしてたんだね……」
ナーシャ「そもそも、ドラッケンに入学させられた時もそう。無理矢理入学させられそうになって、それで家を抜け出したの。いつものようにね。でもいつもはそれほど追っ手もつけてこないのに、その時に限ってやたらしつこかったの。多分、本気でドラッケンで勉強して欲しかったんだと思う。……それならそうと、きちんと理由を説明してくれればいいのに。何もいわずに、なんてね。頭にきたわ。全力で逃げてやったわよ!」
ロビン「それで、どうなったんだ?」
ナーシャ「いつの間にか、追い込まれてた。もうだめかなって、思った。そしたら。」
ロビン「そうしたら?」
ナーシャ「上を見上げるとそこには月明かりに照らされて輝く緑の長髪。顔は、逆光で見えなかったしその人はワタシを引き上げた後、追っ手を引き受けるとか言ってワタシがいた場所に下りていってしまったからはっきり見てない。だけど。ああ、この人が王子様なのかなって、素直にそう思ったの。」
ロビン「……」
ナーシャ「な、なによ! らしくないとかいわないでよ? こういう頃だってあったんだから!」
ロビン「それで、連れ戻されちゃったのかい?」
ナーシャ「結局ね。でも、ドラッケンには素直にはいったわ。だってあの人もそうだったから。でもね。」
ロビン「……そりゃそうだろ。許婚がいるのにそんな相手作って、更にはそれを理由に素直に入っただなんて、追っ手を差し向けるような家の奴が許すはずがない。どうせ、やめさせられてたんだろ?」
ナーシャ「そう、あの人はドラッケンをやめさせられてたの……! だから、ドラッケンに入学した後、ワタシ、調べたの。何があったのか。どこへいったのか。調べ物は得意だもの。自信はあったわ。」
ロビン「そういえば、リューとあっちゃんのときも、2人のことをしっかり調べてたな。」
ナーシャ「ええ……でも、ドラッケンには何の情報も残ってなかった……でも考えたの。やめさせられたといってもそれはドラッケンの事情。その人がまだ冒険者を諦めていないのなら他の学校に転校した可能性があるんじゃないかって。だから他の学校中心に。」
ロビン「だから、探すためにひとまずプリシアナ……どうやって、家の人を言いくるめたんだい? 相当大変だったんじゃ?」
ナーシャ「それは今のツンデレ学科のおかげよ。カリキュラムの優秀さを訴えて、世間勉強って適当に理由つけて。その後、監視をわざとつけさせて即買収して。でその上で転入したの。」
ロビン「ば、買収?」
ナーシャ「……言い方が悪かったわね。そもそもあの家のやり方に反発している人っているのよ。だからそういう人があえて監視につくように、ね。……ただ、向こうは全然その気もないみたいだったけど。というか、あの子は案外、ワタシの家のことなんてどうでもいいんじゃないかしらね……」
ロビン「え、もしかして、俺も会ってる?」
ナーシャ「ほら。あのさくやの事件の際。紫髪のエルフの子、ローズっていたでしょ? あの子。」
ロビン「どう考えても監視に向いていない性格な気がするんだけど?」
ナーシャ「彼女のお兄さんがね、うちじゃ優秀なエージェントなのよ。だからあの子自身も多少信用されてる。素直だしね。そのお兄さんの方に彼女を監視でってお願いしたの。彼女がお兄さんに反感持ってるけど逆らえないって知っていたから、あえて。ほら。あの子、全然報告してなさそうじゃない?」
ロビン「してないな、絶対。忘れていてもおかしくない。きっと。」
ナーシャ「だからワタシがまだあの人のこと探してるって、きっとばれてる……今、ドラッケンに戻ったら……力ずくでも戻される!」
ロビン「だから、あせってたってわけか……でも、大丈夫さ。」
ナーシャ「なんで? 絶対、勝てる相手じゃない……!」
ロビン「俺達全員でかかれば何とかなるって。……大丈夫、大丈夫だって。」
ナーシャ「大丈夫しか、言ってないじゃない……!」
ロビン「いざとなったら逃がしてやることぐらいできるし、それに。」
ナーシャ「それに?」
ロビン「やめさせられそうになったら、ダイにでも頼もうぜ?」
ナーシャ「え、何でそこで……ダイが出てくるのよ……」
ロビン「あいつ、学院スポンサーの坊ちゃんだぜ? 本人恥ずかしがって言わないけど。」
ナーシャ「え、えええ!!?」
ロビン「あはは、びっくりだろ! 俺も知り合って遊びにいって豪邸が目の前にあってびっくりしたぜ。だからそういう事情で学院をやめさせられそうになっても平気なの。」
ナーシャ「そ、そうなるとダイの従兄弟だって言うあのなつきって子も」
ロビン「っていうかあの一族、なんか知らないけどさ、英雄だっけ? あの絡みでなんか上手くあてたらしくて一族そろって金持ちらしいぜ。金持てる理由が英雄絡みで学校絡みなもんだから今もしっかりスポンサーとして3つの学校をサポートしてるって話だ。」
ナーシャ「……」
ロビン「だからさ、心配なんて何もないから。大丈夫だって。な? だから泣かないでくれよ……どうしていいかわかんなくなっちまう。」
ナーシャ「そういうときは、そういうときは黙って胸かしてればいいのよ……! ……もう、下、絶対、見ちゃ嫌だからね……」
ロビン「……了解しました、お嬢様。」
おまけ
リュー「へぇ、意外ね。大金持ちのお坊ちゃんだなんて。もっと普段から堂々としててもいいんじゃない?」
ダイ「そんなことできないよ……もしお坊ちゃんだなんてばれたら苛められちゃうかもしれないし……」
あっちゃん「そんなことさせないわよ~ だから、もっと堂々としなさいな~?」
ヒルター「そんなことをする奴もいないと思うしな。もしされたら言えばいい。力になるぞ。」
ダイ(こういう人達と出会えただけ、ボクは幸せものだと思うよ……)
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