タスク「だーかーら! どうしても調べたいんだって!」
ちあき「無茶をいっているのはわかっています。でもその。仲間のためなんです。先生も冒険者でしょ? 仲間のためって気持ち、わかってくれますよね?」
タケシ「お二人ともその調子で頼むっすよ……」
マクスラーク「先生の足止めぐらいしかできない、と控え目にいっていたがそれが一番重要だというのがわかっていたのだろうかね、タスク君は。」
ミュール「多分わかってないでしょ。単にこっちに加担したくないだけだと思うし。」
ツカヅチ「そうですよね……これ、バレたらどうなるか……」
タケシ「背に腹は変えられないっす! ささっと探してささっと撤収するっす!」
ミュール「それがいいわね。そっちのノームコンビでそっち探して。資料は大体の場所はわかってるんでしょ? あたしはこっちのちっこいのを手伝ってローズの履歴書探してるから、終わり次第手伝ってよ?」
タケシ「ちっこいのとかいうなっす!」
マクスラーク「わかったよ。くれぐれも、物音を立てないようにね、ミュール君。」
ミュール「んなもんわかってるわよ。」
ツカヅチ「私の資料は確か……この辺……」
マクスラーク「……履歴書の中に隠すなんてなかなか大胆だね、君も。」
ツカヅチ「卒業生の履歴書なんてほとんど見られないでしょう? 処分される恐れもない。保管場所としては最適ですよ。」
マクスラーク「確かに。必要になる場面は少ないね。そして、処分するわけにもいかない。……短期間ならばこれ以上ない隠し場所だね。」
ツカヅチ「……そういうことです。あ、これです。マクスラークさん、どうぞ。」
マクスラーク「どれどれ……ふむ、確かに。これで間違いないみたいだね。よくもまあこれを独学で……」
ツカヅチ「あ、あはは……あの頃は何かに取り付かれたかのようにやってましたから……今思えば、それが間違いだったのかもしれません。きちんとした師に習い、きちんとした目的を持って、学ぶべきでした。」
マクスラーク「人は過ちを犯すものだよ……そう、犯さない人など、いないよ。」
ツカヅチ「大小の問題、ですよね……私は、これからでも、償えるでしょうか?」
マクスラーク「それはこれからの君次第だろうが……僕は、できると思うよ。君ならば。」
ミュール「あたしが上、あんたは下。いいわね?」
タケシ「ま、体格的にそっちの方が早いっすからそうなるっすね。」
ミュール「じゃあさくっとくわよ。」
タケシ「わかってるっすよ……ミュール、あんた、本当にそれで見てるっすか?」
ミュール「何が?」
タケシ「いや、そんなパラパラっとめくるだけじゃ……」
ミュール「? 写真あるでしょ? 髪の色が紫のだけしっかりみてるわよ。」
タケシ「……あんたって、要領いいっすね……」
ミュール「んなわけないじゃない。よけりゃこんな犯罪せずともフローライトとローズの関係を見つけるいい手段を思いついてるわよ。」
タケシ「確かに。でもそれは天才でもない限り無理だと思うっす……お!」
ミュール「見つけたの!」
タケシ「これ、これっすよね? こんな感じだった気がするっす!」
ミュール「そうね、フローライトの髪色と若干似てるし……どれどれ、経歴は……」
タケシ「……真っ白っす。あんたと同じで。全部、真っ白っす。」
ミュール「……!」
マクスラーク「ミュール君、こちらは回収に成功した。そちらは……どうしたのかね?」
ミュール「マクスラーク……これ……」
マクスラーク「……! な、何も、書いて、いない!?」
ツカヅチ「そんな! あのローズさんが何も書かずに書類を提出なんて考えられない!」
マクスラーク「そういえばツカヅチ君は彼女と一緒に旅をしていたね……普段の彼女からは、これは、まったく予想できないかい?」
ツカヅチ「……ええ。まったく。あるとすれば……別の誰かが提出したか、書いた履歴書と白紙の履歴書と間違えて提出するというドジをしたかのどちらかかと……」
マクスラーク「彼女なら後者もありそうで、断定できないね……困ったな。」
ミュール「そんな、ドジなの? みなづきとの戦いの時、結構いいタイミングでゆづき助けてたじゃない? 案外できる子なのかも。」
ツカヅチ「……普段からドジっこを演じてた? ま、まさか。」
マクスラーク「そこまでできる人物であるならば。フローライト君の妹といわれてもまったく違和感はなくなるわけだが。……僕は人を信じたいのだがね……」
タケシ「とにかく! 目的の物は確認したっす! これはまたあとで考えるっす。さっさと撤収っすよ!」
タスク「よお! 確認取れたのか?」
ちあき「どうでした? 資料はありましたか?」
マクスラーク「ああ、資料はバッチリだ。……しかし、困ったことになってね。」
ミュール「白紙。白紙の履歴書よ。」
ちあき「……誰のが?」
タケシ「意外だと思われるかもしれないっすけど、ローズさんっす。」
タスク「え? あのローズの履歴書が?」
ちあき「ミュールといいローズさんといい……案外、書類審査って適当なのね……」
ミュール「あ、そういう捕らえ方もあるわね。あたしそれに賛成!」
タケシ「何を言い出すんっすか!」
ミュール「だってドジを演じてるなんて相当難しいでしょ? 出来たら凄いわよ。」
タスク「うーん。なるほど。何かを隠したいから白紙、だから普段の行動も隠してるんじゃないかってことか? ……まー あの戦い方なら出来なくもないんじゃね?」
マクスラーク「戦い、方?」
ちあき「ああ、ローズさんって奇妙な戦い方してたものね。やたら防御が多くて時折庇ってみたり……攻撃に参加なんてほとんどしてなかったの。」
タスク「そのおかげで戦いやすかったけどな。攻撃に参加したらそういうのばれそうだからあえてしてこなかったとか、そういう可能性ってあるの?」
ミュール「……ある、十分ある。でも、それだと……」
マクスラーク「彼女が隠したいことは、別のことかもしれないね。ドジを演じるだけならば手加減すればいいだけの話。どうしてそんな極端なことをする必要があるのかが謎だ。逆に疑われるだろう?」
ツカヅチ「……多分ですが。彼女、手加減なんて器用なこと、できないだけなんじゃないかと……やっぱり、ローズさんはローズさん、で良さそうですね。よかった……」
マクスラーク「しかしこれは……彼女から聞くべきことははっきりしたがあまり期待も出来なさそうだね。……そうなるとやはり、あそこかな。」
おまけ
ドラッケン郊外にある喫茶店付近にて。
ローズ「くしゅん! ……特に寒くもないのにくしゃみでちゃった。誰かに噂でもされてるのかなぁ……?」
一人、喫茶店を眺めるローズ。見つめる先にはカスミと紫髪のエルフ。
ローズ「……どうして、馬鹿兄とカスミちゃんが……だめ、絶対、目を離しちゃ……!」
彼女は一人物陰でただひたすら2人だけを眺めていた。
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