SNS版と微妙に違う所で区切っての収録です。
ローズ「どうしようどうしよう……」
慌てるローズの目の前ではゆづきとみなづきが槍と剣をぶつけ合っている。
今はまだ双方の距離がそれなりに離れているため、リーチのあるゆづきに分がある状態だ。
しかしながら、距離が詰まったその瞬間に勝負が決まってしまうかもしれない。
そんな不安からローズはまともに対策を考えることが出来なくなっていた。
ゆづき「はああ!」
みなづき「ふん!」
ローズの不安を知ってかしらずか、2人の戦闘はローズが想定している最悪の結末へと進行していく。
一瞬の隙をつきみなづきが鋭く切り込むが、ゆづきもギリギリでそれを止める。
ゆづきは先ほどの一撃で完全に間を詰められてしまう。引き離そうにもみなづきは攻撃をものともせずに突っ込んでくため間合いが開かない。
槍は間を詰められると剣に劣る。ゆづきは先ほどまでと一転し不利な戦いを強いられる形となった。
その様子を見てようやく我に返ったローズは自分が携帯電話を持っていることを思い出し、着信履歴の一番上を選択して発信した。
ローズ(誰でもいい、誰でもいいの! お願い、お願い……繋がって!)
カスミ「? どうして、ローズちゃん、この携帯の番号知ってるの……? いったっけ? ……あ、そっか。最初にアドレス交換したっけ!」
ローズ「あ! か、カスミちゃん! ごめん、今すぐ! 今すぐなつきちゃんをこっちによこして! 早く! ゆづき先輩死んじゃう!」
カスミ「え!? えええ!? どういう状況になってるの、それ!? う、うん、わかった! すぐに向かってもらうね! どっちの方とか、わかる?」
ローズ「う、うん……タカチホ出て正面の……いや、カスミちゃんだし、方角言った方がいいよね。東……東の方! わからなかったらツカヅチさんあたりにでも聞いて!」
カスミ「え、ちょっと待って? どうしてあたしだと方角の方が……ああ、そんなこと問い詰めてる場合じゃないね! 東だね、了解だよ。ローズちゃんは時間稼いで! なんとかあたしたちもいくから!」
ローズ「時間を稼いでって……どうすれば……あっ!」
アサミン「ゆづき……? あっちのフェルパーは、誰? ……あっちにいるのはローズよね?」
マクスラーク「何故、ゆづき君が、本気で人と戦っているんだい……!?」
タスク「相変わらずつええな、あの人……でもそれと対等以上じゃないか、あっちのフェルパー。」
ちあき「何のんきにしてるのよ! 止めに入るわよ!」
タケシ「ほら、ミュール! 俺らもいく……ミュール?」
ミュール(……あの、馬鹿……)
タケシ「ミュール!」
ミュール「あ、ああ。止めに入るのね。了解。」
ローズ「気づいてくれた! これでなんとか……あっ……!」
先ほどまで何とか攻撃をしのいでいたゆづきだったが今は片膝をつきみなづきに見下ろされる格好になっていた。悔しそうに睨みつけるも、みなづきは睨み返すどころか笑ってすらいた。
みなづき「弱くなったんじゃないか、ゆづき?」
ゆづき「……まだ、直りきって、ないのも、ある。」
みなづき「……そういや、どうして記憶なくしたんだ?」
ゆづき「知らない。知ってても貴方には教えない。」
みなづき「本当、オレのことを嫌うよな……?」
ゆづき「……!」
立ち上がるのが精一杯のゆづきを強引に持ち上げ、キスをする。
みなづき「ハハハッ! いいか? 力がある奴が一番偉いんだよ! だから、お前より、俺のほうが偉い。だからお前は従う。わかるだろう?」
ゆづき「……わからない。」
みなづき「頑固な奴だな……」
ゆづき「知ってるでしょ。わたしは、頑固。昔も今も、変わらない。」
みなづき「……そこがいいから、問題はないんだけどな。」
ゆづき「……」
タスク「おい、何やってんだよ……それが男のすることか!?」
みなづき「なんだ、お前。」
ゆづき「……確か、タスク……どうして。」
マクスラーク「君がそこまでぼろぼろにやられているなんてね……珍しいこともある。」
ゆづき「……まだ、怪我、治りきってない……」
アサミン「怪我? なに、きちんと治さず出てきてるの? ……はぁ……目的のために多少の怪我を気にしない辺りも、昔まんまなのね……」
ゆづき「……ごめん。」
ちあき「とにかく。先ほどのあれは……あまりに、強引過ぎると思います。そちらの方は謝罪すべきだと思いますが。」
ゆづき「こいつに、そんなこと言っても無駄。」
タケシ「だけど酷いっすよ! こんな力ずくのキスなんて! ありえないっす! 絶対許せないっす!」
ゆづき「……優しいのね。」
ミュール「ちょっと、みなづき?」
ゆづき「! ど、どうしてこいつの名前を!?」
ミュール「ごめん、知り合い。そこの力こそが全てだと勘違いしてる、馬鹿。……まさか、そこまで力ずくでやるなんて……見損なったわ。」
みなづき「……なんでお前がここにいるんだ?」
ミュール「どうでもいいじゃない。とりあえず。さっきのはなしでしょ。謝りなさいよ。ゆづきに。女の唇ってのはね、強引に力づくで奪うもんじゃないのよ!」
みなづき「謝らせたい? そう思うんなら……」
ミュール「力ずく? そんな野蛮なのごめんよ?」
ちあき「……ミュール、今は力ずくでもゆづきさんを……」
ミュール「返り討ちがいいところよ。それで解決するならそもそもこんなことにはなってないし。」
みなづき「……返り討ち? 何馬鹿な……」
ミュール「馬鹿なこと言ってるのはそっちでしょうが! 力ずくで何でも解決するなってあんなに言ったのに!」
ちあき「えっと。どういう関係?」
ミュール「幼馴染。プリシアナ学院に入る前に同じ学校に通っていたこともあるわ。」
ちあき「……なるほど、だから知ってるのね。納得。」
ローズ「と、とにかく! もう止めて下さい! こんなことしたって何の解決にもならないじゃないですか!」
マクスラーク「そもそも、どうしてこうなっているのかな? 理由を説明して欲しい。」
ミュール「どうせ略奪愛でしょ。それ以外知らない馬鹿だもの。」
ちあき「ミュール!」
ミュール「何度だっていってやるわよ? こいつは、力があるなら何だってしていいって思ってる、馬鹿。」
ちあき「気に入らないからって人をそんな……」
ミュール「……気に入らない、なんて一言も言ってないんだけどなぁ……」
タスク「とりあえず、ゆづきさん離せ。そこでようやく話し合い、だ。」
みなづき「やなこった。そもそもオレに話し合いの意思など」
ローズ「なら嫌でも話し合いですよ!」
みなづき「いっ!?」
ミュール達の会話の隙を突き、みなづきの右方から素早くゆづきを奪い取るように引き離すローズ。あまりにも鮮やかな強奪劇にその場にいた誰もが驚く。
アサミン「ローズ、やるじゃない!」
マクスラーク「気配を消せるのかい、彼女は……あの角度からの強奪の仕方も見事だ。熟練の技を感じさせる。」
タケシ「……一体、あんた何者っすか!? 盗賊でもあそこまで華麗な強奪なんて使えないっす!」
ミュール「素直にびっくりしたわ。あれ。どうやるの? 後で教えて!」
ちあき「……まって。みんなどうしてって所に突っ込みを入れないの……?」
タスク「ちあきも大変だよな。案外、みんなボケるから。」
ちあき「この状況下で私の気遣いをしてくれるのは本当嬉しい、嬉しいけれど。この場じゃなくてもよかったわ!」
タスク「オレ、なんか変なこといったか?」
ローズ「変なことを言わなかったから逆に驚かれているんですよ!」
タスク・ローズ以外全員「大元が言うな!」
ローズ「うわあん! たまにはかっこつけさせてくれたっていいじゃないですかー!」
アサミン「と、とにかく。ゆづき救出、よくやったわ。早く診せて!」
ローズ「お願いしますね、アサミン先輩!」
みなづき「そうやすやすと終わらせると思うか!」
ミュール「これで終わりにするの! これ以上は本当に無意味でしょうが!」
----↑ここまで↑----