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2011年1月20~22日に公開しました、親衛隊『冒険日誌』第4話として公開した話の再録です。
3更新分です。

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さくや「気づいてはいましたが……タカチホですね。」

なつき「気づいていたなら突っ込んでください! ここが第一目的地ってわけじゃないのですよ!? 今回は温泉が第一目的地なのですよ!? タカチホは温泉の後の予定だったはずです! トコヨから温泉向かっていたはずでしょう!?」

砂漠を歩き、何故かタカチホに到着してしまった一行。
だがゆづきによるとそれには少しばかり意味があるようで……

ゆづき「でも、この中に、確実にある場所を知っている人、いる?」

なつき「え、それは確かにいないでしょうけど。いれば直接そこへ向かうように言い出すのが普通ですからね。」

ゆづき「なら。地元の人に聞くのが一番早いわ。」

カスミ「先輩にしては、きちんと考えた上での行動だったんですね。」

ゆづき「わたしにしては……なんだか、普段は考えて行動してないみたいな言い方……」

カスミ「え!? あ、えーっと! ち、違うんです、悪気があっていったわけじゃ!」

なつき(か、カスミ! 口軽すぎですよ! それは誰しも思ったことです!)

さくや(カスミもそれほど考えてないでしょう。それに、口が軽いのは今まで一緒にいてわかってることでしょう? 今更よ。それにしても先輩も地元の人なんですけど。)

なつき(それをいっちゃだめですよ! あ、でもいったら少しは思い出してくれるかもしれませんですね。言ってみるですか?)

さくや(いつものごとく、『そうなの?』って返事が返ってくるのが目に見えてるけど……やりたければどうぞ。ご自由に。)

なつき(あっさり許可出したですね。)

さくや(先輩はわたくしのものじゃないって、あれだけ騒いだのはどちら様?)

なつき(なつきたちですね……ふーん。一応気にはしていたのですね。ちょっと、先輩のこと見直したです。じゃ、いってくるですよ~)

さくや(本当、一言多いわね……)


ゆづき「どうしたの、2人して……珍しく喧嘩もせず。」

なつき「先輩から見てなつきたちはいつも喧嘩しているイメージですか?」

ゆづき「……2人だけで話している時は大体喧嘩が多い気がするのだけれど。」

なつき「酷い言い様ですね……反論できないですけど。で、聞くというお話なのですが。」

ゆづき「うん?」

なつき「ゆづき先輩、ここ出身みたいなのでゆづき先輩に案内してもらおうかと。」

ゆづき「……そうなの?」

なつき「本当に予想と違わない反応ですねっ!?」

さくや「だからいったじゃない……」

ローズ「あ、先輩となつきちゃん、2人でそういう話してたんだ……うーん。砂漠とかも何にも反応なしだったし無理だと思ったから私も提案しなかったんだけどな。」

なつき「ローズ、予想してたのですか!? 意外です。あのローズにすら予想されていた反応なんて意外です!」

ローズ「その反応が意外って……そして酷いよ!!」

カスミ「あ、あはは……でもほら。そもそもあっちゃんさんやリューさんと同じパーティー仲間だったのに、親衛隊活動の際、全然気づいてないんでしょう、先輩って。」

ツカヅチ「それって結構重症だよね……いや、周りを見ているようで実はそれほど関心を持ってみていないのかも……」

さくや「……そもそも、わたくしの名前どころか自分の名前すら忘れる始末ですから、この人。」

全員「……」

ローズ「あれ、なんでゆづき先輩まで黙り込んじゃってるの?」

ゆづき「……その、ごめんなさい。」

カスミ「なんかシュンとした先輩って始めて見た……ちょっと可愛い……じゃなくて! そんな、打ち所が相当悪かったんだよ、きっと! だからしょうがないって!」

さくや「……は、羽までしぼめて……落ち込みすぎです、先輩……」

なつき「いつもはピンと跳ねてる耳までシュンとなっちゃってるですよ……相当、落ち込ませてしまったようです。言葉には気をつけるですよ、この腹黒参謀!」

さくや「た、確かに少しさっきのは言い過ぎました。わたくしが悪いですのでほら、先輩……?」

ツカヅチ「……先輩、拭えぬ過去の道で、私にこういいましたよね? 自分で思い出せたこともある、と。」

さくや「え? 突然何を?」

ツカヅチ「その『自分で思い出せたこと』をいくつか上げてもらえないでしょうか?」

さくや「ツカヅチ、貴方何を考えて……!」

ゆづき「……いいよ? でも、何のために?」

ツカヅチ「ゆづき先輩が『自分で思い出せたこと』に共通する事項が明らかになれば何が引っかかっていて思い出せないのか、がわかるかもしれないと思いまして。」

ツカヅチ(それに、ゆづき先輩を落ち込ませたくないのでしょう、さくや先輩。ここは強引でも話題を変えたほうがいいです。私も、落ち込んでるゆづき先輩を長く見ていたくありませんから。)


さくや(!)

ローズ「なるほど! 水道管に石がつまって水が流れないから、その石を取り除こうってことですね!」

なつき「その例えよくわかんないですよ!!」

ローズ「え! じゃあ蛇口をひねってもホースから水が出ないから何処で止まってるか調べよう?」

カスミ「ま、まあ近いのかもしれないけど……でもローズちゃんの場合、絶対ホースを折り曲げていたから出てきませんでしたってオチだと思う……」

なつき「で、まっすぐに直したとたんに水圧で吹っ飛ばされるですね。ああ、目に浮かぶようですよ。」

ローズ「私、そんなドジキャラですか!?」

ゆづき「……そうなの?」

ツカヅチ「……えっと。何に対しての『そうなの?』なのかちょっと判別がつかないのですが……理由は、わかっていただけたでしょうか?」

ゆづき「うん、なんとなく。……まって、書き出したいから、書ける物……」

さくや「そうですね。ちょっと落ち着いた所で休憩でもしながら」

???「永遠のライバルが! なんでこんな所で悠長に会話しているんだキーーーック!」

ゆづき「誰!?」

ゆづきは突然乱入してきたクラッズの蹴りを槍で受け切る。

???「相変わらずいい反応じゃない、ゆづき! ……あ、もしかしてワタシのことわかんない?」

ゆづき「……誰?」

さつき「相変わらず返答がない限り同じようなことを繰り返し言うのね。さつき。さつきよ! 覚えてないの?」

ゆづき「……わたし、自分の名前すら思い出せない馬鹿だから……」

ローズ「あ、しょげちゃった。」

さくや「相当ショックだったんですね……ごめんなさい、本当ごめんなさい……」

なつき「さ、さくや先輩にまで伝染したです……ゆづき先輩恐るべし、です!」

ローズ「でもさくや先輩はこれぐらいの方が安全そうでいいや。」

さくや「ローズ?」

ローズ「うわぁん! 生意気なこと言ってごめんなさい!!」

さつき「何こいつら。面白い連中ばかりでやよい好みっぽいわね……」

カスミ「面白い奴認定されちゃった……あたしまだ何も話してないよ!? まあ同類かもしれないけどさ!」

さつき「認める前から同類っぽい雰囲気かもし出してるでしょ。ゆづきの周りって変なのばっかり集まるわね。なんだ、記憶なくしてもその辺一緒じゃない。心配して損した。」

ゆづき「そうなの?」

さつき「そうそう! で、何しにきたの? 自分探しの旅? なら確かに最適だけど?」

ゆづき「ううん。温泉。」

さつき「は?」

ゆづき「温泉を、探しにきたの。」

なつき「あ~っと。ちょーっとさつきさんはそこで待つです。このちょっと頭の痛い先輩にちょっとお話ししたいことが出来たので。」

さつき「うん、いってらっしゃい……」

なつき「ノリがいいと助かるですよ~ ささ、先輩、こちら来るですよ?」

ゆづき「う、うん?」


なつき「何ありのままを話そうとしているのですか!!」

ゆづき「だって、何をしにきたっていわれたから……」

なつき「そこで素直に温泉ですか? 普通もう少し会話つなげてからそこに軟着陸する物でしょう!? なんでそれができないですか!? それどころかあれ! 絶対先輩の知り合いじゃないですか! 聞くべきものはそれじゃないです!!」

ゆづき「……ごめんなさい……」


さつき「何あれ、お説教?」

さくや「珍しい光景だけど……ゆづき先輩が正座で聞いているのなら、間違いないでしょうね。」

さつき「やっぱゆづきはゆづきってことね。あ~ 本当に心配して損した! 馬鹿みたいなことしたわ。」

カスミ「あれ、そういえば記憶がないって知ってたの?」

さつき「うん、あんた達が来る前にさ、他にプリシアナの子達が来てみなづき様にきちんと報告していったんだ。」


ゆづき「みな、づき?」

なつき「ですからして……先輩、どうかしたですか?」

ゆづき「……ごめんね、なつき。あとで、きちんと聞くから。」

なつき「ちょ、ちょっと! いきなりどうしたですか!?」


さつき「ん? なんか向こうの様子が変じゃない? ってかこっちにくる?」

ローズ「あれ、本当だ。先輩が話途中に切り上げるなんて珍しいね……」

ゆづき「さつき、だったわよね?」

さつき「ええ、そうよ? 本当に覚えてないんだ。」

ゆづき「ええ……で。みなづきって、誰?」

さつき「! その単語に反応してこっちに来たの? 意外。それに反応するなんて。」

ゆづき「……誰?」

さつき「本当に忘れちゃったの? ……まあ、一番忘れたかったかもしれないことだろうけどさ。」

ゆづき「……わたしが、忘れたかった?」

さつき「いいの? 案外、忘れたくて忘れてることなのかも? 思い出しちゃって、いいの?」

ゆづき「……!」

さくや「はい、そこまでです。先輩も。さつきさんも。」

さつき「なにすんのよ!?」

ゆづき「さくや、どいて?」

さくや「嫌です。ローズ。ゆづき先輩を引きずってでもいいから離れた所へ連れて行って。そうね。なつきの所がいいわ。」

ローズ「え? なんだかよくわからないですけど、了解ですー! よいっしょっと!」

ゆづき「え!? な、う、動けない!? どうして!」

ローズ「ここをこうやって締めちゃうと動きにくくなっちゃうんですよ~ よいしょ、よいしょ……」

カスミ(茶々入れるべきじゃないんだろうけど! どうしてそんなこと知ってるの、ローズちゃん!! どうしてゆづき先輩を引きずれるのローズちゃん!?)

さくや「……あの子、やるわね。」

カスミ(先輩もわかっててやってたわけじゃなかったの!?)

さくや「まあいいわ。さて、さつきさん。」

さつき「何よ?」

さくや「変にゆづき先輩の動揺誘うの、やめてくれないかしら?」

さつき「何でよ。」

さくや「先輩が辛そうな顔をするのは、わたくしは見たくないの。」

さつき「ふーん。でもワタシの言葉が動揺を誘う……ワタシが感じることじゃないし、どれが動揺さそうかわからないんだけど?」

さくや「確かに。しかし結果としてさっきの言葉は動揺を誘った。それは何故か……わたくしが代わりに聞いて差し上げようと思うのだけれどもよろしかったかしら? どうも先輩にとって刺激が強すぎることのようだから確認を取ってからでないとわたくしが不安なの。」

さつき「ゆづき以外に言う気はないわ。」

さくや「ふーん。そう?」

さつき「な、何よ。あごなんて引いて。そんな近くから見つめて!」

さくや「さて、どういじめてやろうかしら?」

さつき「な!? なななな!?」


なつき「ああ……さくや先輩のゆづきスイッチ押すからですよ……」

ツカヅチ「なんで入っちゃったんだろうね……しかしあれは、しばらく止まりそうもないね。どうしよう。あれ、危なくないかな……?」

なつき「こんな公共の場でそれほど危ない行為に走るとは思わないのですよ。そもそも自分で言い出していることですし。反省はしていましたし、きちんと信じて待ってあげれば大丈夫ですよ。なつき達はローズとゆづき先輩の所へ行くですよ。」

ツカヅチ「そうだね。」


ゆづき「ローズ。何処をどうやって巻いたらこんなにしっかり固定できるの……?」

ローズ「完璧でしょう!? 久しぶりだったんですけど! 上手くできて本当よかった~!」

カスミ(いや、だから何処でそんな技術を習得してるの、ローズちゃん!!)

なつき「うわぁ……遠くから見ると縛られてるように見えないです。凄いですね、この拘束術。さくや先輩にでも習ったんですか?」

ローズ「さくや先輩は道具未使用派ですからそれはないです!」

ツカヅチ「……そっちの方が問題だよね。深くは聞かないけど。」

カスミ(深く聞かなくちゃいけないのはどうしてそれをローズちゃんが知ってるかだよ!)

ゆづき「……さくやは?」

なつき「ああ、さくや先輩はさつきさん問い詰めてるですよ~」

ゆづき「わたしがやったのに……」

なつき「珍しいですね。というかここにきてから珍しいことばかりですが。先輩。本当、どうしたのです?『みなづき』って人と知り合いなのですか?」

ゆづき「知り合い。まず、間違いなく。……それ以上だと、思う。」

なつき「……本当、珍しいことばかりです。先輩がここまではっきり答えるなんて。特別な人、なのですかね?」

ゆづき「そう、だけど会いたくない。」

なつき「??? 意味がよくわからないですよ。」

カスミ「あ~ 少しわかるかな。会いたくない……でも会わなきゃ、わからない。そんな感じなんですよね?」

ゆづき「どう、なんだろう? だから、さつきに聞きたかったの。だけど……」

なつき「結構頑なに聞きたい聞きたいいう割には、さっきの『思い出していいの?』であからさまに動揺してたですよねぇ……先輩。」

ゆづき「……それは。」

なつき「要するにゆづき先輩って思い出したいことと思い出したくないことが沢山ありすぎてなかったことにするのが一番楽だから今の状態なんじゃないんですか?」

ゆづき「わからない。」

なつき「なつき、いいましたよね? 人と関わりを持つ以上、きちんと思い出すべきだって。そういったですよね?」

ゆづき「……それは。」

なつき「あんな言葉で動揺しているような、そんな先輩なら、いっそそのままでいたらいいですよ! 辛いことも、楽しいことも! 全部含めてその人なんですから! それをおいていこうとしていく人のことなんて私、知らない!」

カスミ「え! ちょっと! なつきちゃん!!」

ローズ「飛ぶのは反則! 追いつけないよ!」

ツカヅチ「私が追いかけるよ……2人は、先輩を見てて?」

カスミ「ええ!? まって、この状態で置いていかれるのもあれだよ!?」

ローズ「本当です、何を話せと!? ああ! 待ってくださいツカヅチさん!!」


なつき「どいつもこいつも。本当、自分勝手すぎるんです。置いていかれる側のことも、少しぐらい……少しぐらい考えてくれたっていいじゃないですか。」

ツカヅチ「はぁ、はぁ……よ、ようやくおいつきましたよ。」

なつき「ツカヅチ!? ああ、そういえばさりげなくノームでしたっけ。飛べるの納得です。でも今は一人にして欲しいです。あっち行くですよ。」

ツカヅチ「……いらだつのは、わかるよ? でも、あの人って自分で決心するまでに時間がかかる、そういうタイプの人だろう? だから……」

なつき「違うですよ……確かにそれもあるですけど。」

ツカヅチ「?」

なつき「もしもまた。同じことが起きて。あの人の記憶がまたなくなって。その時、私たちのこと、あの人は覚えていてくれるのかな?」

ツカヅチ「!」

なつき「みなづきって人と先輩の関係はわからないけど。だけど特別だというのは、わかった。でも……それ以外のこと、全部、あの人は全部忘れちゃう……置いていかれちゃうみたいで……嫌だな……そう思ったのです。」

ツカヅチ「……そこまで、考えてたの?」

なつき「なんですか……なつきが馬鹿みたいないい方して。これでも入学試験はトップだったんですよ?」

ツカヅチ「……」

なつき「あ、今唖然としましたね? だから親衛隊に1人入学したてなのがいても、同期のみんなが特に何も言わないんですよ? 気づいてなかったです?」

ツカヅチ「いや、本当、それは。意外すぎて……」

なつき「……だから余計なことまで、考えちゃうこともあるのです。でも、ツカヅチの言う通りなのですよ。」

ツカヅチ「え、私は特に重要なこと……」

なつき「そうですよ、まだきちんと決心して、それでつれてきているわけではありませんでした! そうですよ、そこまで深く考える必要なかったですよ!」

ツカヅチ「え、あ、そうとったの?」

なつき「ささ。戻るです。さっさと戻ってお説教の続きです!」

ツカヅチ(自分勝手なのはなつきちゃんじゃないか……!)


ゆづき「……」

カスミ「……」

ローズ「……」

カスミ(ねね、ローズちゃん。あたしたち、どうすればいいの?)

ローズ(私にそれを聞かれても……ああ、この状況打開してくれるなら今回はさくや先輩でもいいからきてほしいよっ!)

カスミ(そうだよね……あ、そうだ、せっかくだから)

ローズ(? 何、カスミちゃん?)

カスミ(どうしてローズちゃんは)

さくや「……何? この辛気臭い状況……」

ローズ「あっ、さくや先輩! ごめん、カスミちゃんまた後でね。」

カスミ「……え? ああ、うん。大したことじゃないから、別に気にしないで。」

ゆづき「さくや?」

カスミ「……え、なんでさつきちゃん気絶してるの??」

さくや「別に何もしてないわ。耳元でつぶやいてやっただけ。案外、小心者なのね。」

ローズ(十分恐怖だと思います!)

ゆづき「何か、聞けた?」

さくや「先輩、気になります?」

ゆづき「……気になる。」

さくや「……あら、この縛り方……なかなかね。誰? 縛ったの。」

カスミ「それはローズちゃんが。」

さくや「貴方、案外マニアックな結び方するのね。」

ローズ「いえ、マニアックとかじゃなくて単純に効果的なのしか教えてもらってないだけで……」

さくや「ふーん……あとで教えて? 手取りあ」

ローズ「お断りさせていただきます!!」

カスミ「まだスイッチ入りっぱなしなんだね……困るなぁ……なつきちゃんもいないのに。」

さくや「あら、そういえばなつきがいないわね……そうね、この状態で先輩に少しいたずらしてもいいかしら?」

ゆづき「……さつきから聞いたこと、全部教えてくれるなら、いい」

ローズ「ダメ! その取引にOKしちゃ絶対だめえええ!!」

ゆづき「ダメなの?」

ローズ「はい、その取引はアウトです。」

ゆづき「……別の条件にして?」

さくや「ローズ、余計なことを……! まあ、先輩がそれほど聞きたいといわれるのでしたら。大した情報でもなかったのでもうさらりと話しますね。」

カスミ(ほとんど価値のない情報でこの人何をしようとしてたんだろう……! 想像できないことないけど想像したくないよ……! 流石先輩、恐るべし……)

さくや「要するにみなづきというのはどうやら先輩の許婚ということになっている男のようです。ただし。先輩はこれをよしとしていなかった。」

ゆづき「……!」

ローズ「確かにそれほど重要じゃなさそうですね……」

カスミ「え、え、ええええ!? 先輩に許婚!? え? つまり先輩ってお金持ちだったりするの!? というかいいと思ってないって!?」

ローズ「え? そんなに動揺するところかなぁ……?」

カスミ「するところだよ!? ってかローズちゃんは驚かないの!? 先輩に許婚だよ!?」

ローズ「え? 許婚なんてよくある話だよね?」

カスミ「え、この状況騒いでるのあたしだけ? ってかよくある話なわけないよ!」

なつき「た、確かに許婚はよくある話ではないと思うのですよ、ローズ……」

ツカヅチ「お待たせ、2人とも……あ、さくや先輩、お帰りなさい。」

ローズ「え? 許婚って、よくある話じゃなかったの? ……え? 私が変なの!? ああ!? そうなの!? そうだったんだ! 知らなかったよ!!」

ゆづき「……段々、収拾がつかなくなっていってる気がするのだけど……話、続けてもらって、いい?」

ローズ「あ! ご、ごめんなさい……」

なつき「そうですね、途中からきたなつきたちにもわかるよう話すですよ、腹黒参謀。」

さくや「せめて、名前で呼びなさい? 今は機嫌がいいから許してあげるけど……それで、ゆづき先輩はどうやら許婚との結婚話がこれ以上進むのが嫌で、タカチホ義塾に入学する所を無理矢理プリシアナ学院に入学した、という経歴の持ち主のようです。大丈夫。わたくしがしっかりと問い詰めた結果の情報です。」

ゆづき「……それ、なんとなく、覚えてる気がする……でも、重要なのは、そこじゃない……」

さくや「……これじゃなかったんですね。残念ながら、この辺りまでしか聞けませんでしたし、これ以上知らないようですのでもうさつきは用済みですね。」

カスミ「用済みって……! ってかいつの間に呼び捨てになってるんですか!?」

さくや「こちらの方が呼びやすくなくて?」

カスミ「そうですよね……先輩って基本的に呼び捨ての方が似合いますもんね……素だと。」

なつき「とにかく。重要じゃないのはそこじゃない、まではわかったのです。ここから。先輩はどうしたいですか? 知りたい? 知りたくない? どっちです?」

ゆづき「……時間が、欲しい……」

なつき「了解です。じゃあ今日はここに泊まる手はずだけ整えて、解散です。また明日ここに集合ですよ、皆さん!」

ローズ「了解! ささ、温泉情報探すぞ~!」

カスミ「うん、また明日ね! あ、ローズちゃん、手伝うよ~!」

ツカヅチ「わかったよ。せっかく別の学校に来ているのだし、図書室でも見てみようかな……」

さくや「あら、わたくしを野放しにするなんていけない子達ね。」

なつき「今のさくや先輩を放っておくほどなつきは馬鹿じゃないのですよ。ほら、いくですよ。手続きとか貴方が一番スムーズに済ませられるでしょう。一緒にくるです。」

さくや「はいはい……」


おまけ
先ほどまで騒がしかった広間には人影はなく……なっておらず。

ゆづき「……あれ? わたし……ロープ、解いてもらってない、よね?」

ゆづき(あれ? これって遠回しに反省を強要されてる……そうだよね。今日は迷惑かけっぱなしだったし……でも、これじゃあ……寝れない……)

結局、柱に貼り付けられたまま、一晩過ごしたゆづきであった。

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