ゆづき「さくや……貴方と1対1なんて、初めてな気がする。」
さくや「1対1でなくとも、ゆづき先輩とわたくしが戦ったのは過去1度きり……あの事件だけでしょう?」
ゆづき「そう、その記憶は間違ってないのね……ならちょっと、楽しみ。」
さくや「……あまり高く評価なさらないでください。そもそも、術師と戦士。術師であるわたくしの方が圧倒的に不利。これを覆せるほど、わたくし、自分の実力に自信はありません。」
ゆづき「どうかな……さくや、さっきまで考える時間があった。相手が誰だか予想できて、きちんと策を練れる時間があったのなら、ほぼ対等だと思っていいと思うのだけれど。」
さくや「……そう、ですね。面白い物をお見せすることができる、ぐらいはいっておきましょうか。」
さくや「ねぇ、リュー。貴方に確認。」
リュー「何?」
さくや「場外からリングに向けてのエアーは、いいかしら?」
リュー「あんた、リングから場外に向けてのエアーは撃ちまくりだったでしょうが。」
さくや「あれは対象をリング外へという『ターゲットを指定しての魔法』だもの。戦闘ルールに反していませんし、場外ルールがある以上、利用しないわけがないわ。しかし『場外』という対象物のない物に対しての魔法。これは戦闘のルールからは外れることとなります。確認取るのはおかしいかしら?」
リュー「……別に、ゲームでもなんでもないんだから、それが必要なら誰も文句は言わないでしょ。」
さくや「じゃあこれはお願い。場外部分に、砂を引いてもらえる?」
リュー「……むしろあんたがバカスカ相手を場外に落とすもんだから水にするか砂を引くか提案しようとは思ってたわよ。」
さくや「そう。じゃあ砂でお願い。」
リュー「だ、そうだけど。放送席、いいの?」
ブレーミー「なんかさくやさんがまたそれ利用しそうだけど……まあ、さくやさん不利だしさ、いいんじゃない、それぐらい。でも一応、ゆづきさんに確認とってからね。」
リュー「らしいけど?」
ゆづき「さくやの好きにしていいよ。ただし、リングに細工は許さない。」
さくや「流石のわたくしも、そのようなことはしません。」
リュー「準備完了よ。2人とも、準備はいい?」
さくや「……」
ゆづき「いつでも、いい。」
シアン「じゃあ……はじめ!」
さくや「エアーガン!」
ゆづき「!?」
なつき「あの人はまた何を……って!?」
ローズ「場外に砂って砂嵐にしたかったから!? ……これじゃあゆづき先輩の視界、ほぼゼロじゃ!?」
カスミ「うっわ、さすがさくや先輩……自分のフィールド作ったうえでの戦いだったんだね、これ……」
ショーゴ「だが、何が狙いだ?」
カスミ「そりゃ、攻撃させないように」
ローズ「……そうだよ、これじゃあ先輩だって狙い定めれないからただの時間稼ぎにしかならないよ。」
カスミ「あっ、そっか。時間稼いで詠唱でもする気なのかな? 先輩ってそんな大掛かりな魔法使えるのかな?」
なつき「……! あ、あの人、一撃狙いですね!? 確かにあの魔法ならいけるかもしれませんですけど!」
ブレーミー「まーたあの人、進行ペースのこと無視した魔法とか使っちゃうのかな。そもそもあの騒ぎのときの装備ってさ、ラスボスクリアできちゃうレベルの装備設定なんでしょ?」
なつき「そうでしたね。それをぜんぶうっぱらうとは何事ですかという話ですが! じゃなくてですね!」
ゆづき「ようやく、収まって……! さくや、それ本気!?」
さくや「……ええ。進行ペースなど、わたくしには何も関係ないこと。全力で行かせていただくと、事前に宣言しましたよ?」
ゆづき「させない!」
さくや「……掛かった! アクア!」
ゆづき「水!?」
カスミ「あれって水の符呪!?」
ブレーミー「いや、確かにアイテム禁止した覚えないけどさ!」
ローズ「もうやりたい放題じゃないですか!?」
ショーゴ「らしい、といえばらしいのかもしれんが……だが、何の意味が?」
リュー「……あの杖がまとってる雷といい……あの魔法、ぶっ放す気ね……まったく、遊びなのにガチとか、おかしいんじゃない? シアン、下がるわよ。」
シアン「え?」
リュー「……さっきの水の符呪、ゆづきがまともに食らったけれど、それでこぼれた水がそこらじゅうにあるから絶対それには近づかないこと。死ぬわよ?」
シアン「あ、ああ……」
ゆづき「それを撃たせるわけには……砂が、さっきの水で目に入って……視界が……」
さくや「先輩、気づくのが少し、遅いんです……トール!」
なつき「やはりですか……審判は……よかったです、退避してるです。」
カスミ「ちょ、ちょっと!? これってかなり学科履修してないと使えない魔法じゃ」
ブレーミー「あーあ……本編に続いてペース無視の大技炸裂だね……さすがさくやさんというか……」
ローズ「ここまで来るとなんというか……」
ショーゴ「……だが……あっちの方が、化け物だろう?」
なつき「はい?」
さくや「……!?」
ゆづき「……さくや、貴方の誤算。貴方がエアーでふっ飛ばしすぎたせいで、審判が風のイヤリングを参加者に配布してる。耐性は、あった。たとえ、水かぶってても、ね。ぎりぎり耐えれた。ここからが、わたしのターン。」
リュー「ま、まさかここで風のイヤリングが出てくるなんて……」
シアン「忘れかけた頃に出てくるのがこの作品の作風らしいしさ。まあ、想定内じゃね?」
リュー「確かにこのプリシアナ編第1部の設定がドラッケン編後半で使われたりとか……使い回しが好きな作者だものね……」
シアン「ここからどうする気なんだろうな、さくや。」
リュー「どうする気も何も……あれが防がれちゃ、もう打つ手なんてないんじゃない? ある程度避けれるとはいえ攻撃手段がないんじゃお手上げでしょ?」
さくや「……」
ゆづき「さくや、どうする? 負け、認めてもいいよ? 貴方にこれ以上攻撃手段があるとは思えない。」
さくや「……いいえ。まだ、魔力は尽きていません……魔力尽きるまで……やらせていただきます。」
ゆづき「……まだ策、あるんだ?」
さくや「いいえ……たまには、策なしでも面白いのではないかと。せっかくの、お祭りですしね?」
ゆづき「……いいよ、別に。こういうところで、こういう場面で、調子に乗るぐらいは……」
リュー「あの戦闘狂ども……遊びだしたわね!」
シアン「……戦いって、楽しいか?」
リュー「それが普通の感覚。あれは冒険者になる過程で感覚壊れた人達。結果じゃなくて過程を楽しみだしちゃったらアウトよ。」
タケシ「とりあえずこのままリングから離れてるのが無難っすね。」
リュー「あら、貴方……残ってたの?」
シアン「いないとばかり思ってたぜ。」
タケシ「危険な試合ばかりだったから退避してたっす。タスクさんの試合もあったっすからね。」
リュー「まあ、まだ危ないことには変わりないんでしょうが……」
ゆづき「さくや、使わせると思ってるの?」
さくや「……ですが、先輩を倒すにはもう一度トールを放つ他ありません。どれだけ中断されようが、魔力ある限り続けさせていただきます。」
リュー「さくやはやる気満々だけど、ゆづきにしてみたらトールが決まればもうあとがないわけで……本気で止めにいってるから多分、さくやのトールは決まらないんじゃないかしらね。」
シアン「……だけどよ、あの金髪のねぇーちゃん凄いわ。あれ見切ってるとか」
リュー「見切ってないわよ?」
シアン「は?」
リュー「さくやは風で無理矢理ゆづきの槍の軌道変えてるのよ。」
シアン「はあああっ!? そっちの方が無茶苦茶じゃね?」
タケシ「あー……アサミンさんがたまにやるのと同じことやってるんっすね?」
シアン「はい?」
タケシ「アサミンさんは本当に危なくなると相手の攻撃をシャインで弾こうとするんっす……よく失敗してるっすけど。」
リュー「そもそもさくやがやりだしたのが先。強引にそれを再現してみせたのがアサミン。」
シアン「……次元がちげぇーよ、あんたらパーティー……」
リュー「一応、上級生なのよ、アタシ達。こういう小技は出来て当然。」
さくや「……!」
ゆづき「さくや、そろそろ負け、認めて。ここまで頑張ったのだから、誰も文句は言わない。」
さくや「わたくしのプライドの問題です!」
ゆづき「さくや……これは遊び。そこまで熱くならなくていい。」
さくや「……ヒルターに示しがつかないわ……」
ゆづき「……わかった。覚悟は、あるのね。」
さくや「……」
タケシ「動きがとまったっすね。何が始まるんっすか?」
リュー「……退避退避! 総員退避よ! 2人とも大技ぶちかます準備してるから!」
シアン「ゲゲッ! トールとあの一撃だろ!? リング持つのか!?」
リュー「知らないっ! とにかく命に関わるから退避!」
ゆづき「はあああああっ!」
さくや「トール!」
さくやのトールがあたりを真っ白な光で埋め尽くす。
そしてリングは砂埃に包まれ様子が伺えなくなってしまった。
ブレーミー「……どうするの、これ。」
ローズ「手加減なしの本気でのぶつかり合いってっ!?」
カスミ「うっわ……なんか、先輩達大人気ない……」
なつき「まあ、大人げがあればあのお二人が親衛隊にいるわけがないのですが。」
ブレーミー「確かに……あっ! 人影が見えるよ!」
リュー「えっ!? 二人とも倒れたんじゃなくって!?」
シアン「引き分けかと思ってたのかよ……」
タケシ「まあ、気持ちわかるっすけど。どっちっすかね……」
ゆづき「さくや、この風のイヤリングがなければ、貴方の勝ちだったと、思う。……でもこれが配布される過程は、貴方が作った。……貴方は貴方に負けたのよ。……聞こえて、ないわね。」
アサミン「はいはい、そこまでそこまで! その勝負はさくやの負け! ほら、さっさと離れる離れる!」
ブレーミー「ええええっ!?」
なつき「あの人、ずいぶんと前にここ離れてませんでしたか!?」
カスミ「戻ってきたの!? どうして!」
ゆづき「アサミン……もしかして、上から見てた?」
アサミン「……ほら、さくや寄こす。さっさと診療室つれてくから。」
ゆづき「……はい。」
アサミン(ったく馬鹿ね……別にこんなところで挽回して見せなくてもよかったでしょうが、まったく。本当、変なところでクソ真面目で……放っておけないんだから。)
ローズ「いっちゃった……」
ブレーミー「と、とりあえず! しんぱーん! そろそろ勝者と優勝者の発表をお願い!」
リュー「……わかったわ、勝者、ゆづき!」
タケシ「おめでとうっす!」
シアン「おめでと……ありゃ?」
タケシ「どうしたんっすか?」
シアン「ゆづき、どこだよ? それに観客、誰も残ってないぞ?」
タケシ「……あれ? さっきまでいたっすけどね……」
リュー「ああ、ゆづきならさくやについていったわよ。」
ブレーミー「……」
ローズ「これはもしかして……」
カスミ「あれ、もしかしてあの先輩2人の戦い、長すぎた?」
リュー「そういえばヒルター様もアサミンにつれらていくさくやを見に……ちょっと!? エンディングは? エピローグは!?」
シアン「うっわ、ぐだぐだ……」
タケシ「まあ、わかってたことっすけど。」
ブレーミー「ええええっ!? もっときちんと締めようよ!」
ローズ「と、とにかく、これにて最強王座決定戦は終了」
カスミ「ここで強引に締めちゃダメじゃん、ローズちゃん!」
ローズ「他にどうしろと!?」
リュー「ああ、ぐだぐだ、ぐだぐだすぎよ……」
あっちゃん「馬鹿ねぇ~ 最初からこうなることぐらいわかってたことじゃない~ 始まりから終わりまでぐだぐだがこれにはあってるわよ~」
リュー「そんなわけないでしょ!」
あっちゃん「とにかく~ これにて『第1回』最強王座決定戦は終了よ~ こんな中途半端な段階でこんな大会開く作者を恨んでね~」
リュー「……第、1回? ちょっと! あっちゃん、あんた何を知ってるのよ!」
はい、次回に続くエンドです。
かなり強引な締めですが、こんなぐだぐだっぽいのがこの創作のノリかなと……(笑)