この第1部最終話扱いのこの話は全更新数10回とかなりの長さになっていますので小分けにすることにしました。
今回は4更新目途中までです。
ゆづき「ローズ、カスミ。大丈夫だった?」
ローズ「は、はい!」
カスミ「えへへ! 実はですね、先輩! あたし達も冥府の迷宮へいってきたんですよ!」
ゆづき「あら、そうなの?」
ローズ「タスクさんがどうしても行きたいって。だから少しお手伝いしてきたんです。」
さくや「……貴方達の方が先にたどり着いていたわね。」
ツカヅチ「そうか! 私達の前に来たパーティーってタスクさん達のパーティーだったんですね!」
さくや「調子が悪くて倒れたからローズ達を置いていったのに、ローズ達の方が早く着いているなんて……まさか、とは思っていたのだけれど。」
ローズ「そ、それはその。ご、ごめんなさい……!」
カスミ「あはは……ごめんなさい!」
ゆづき「いいのよ。無事ならそれで。さくやも。変にプレッシャーかけると可哀想。」
さくや「……すみません。でも。この調子なら次のクエストもいけそうですし、次のクエストを見に行きましょう?」
ゆづき「それもそうね。ローズ、カスミ、いける?」
ローズ・カスミ「はいっ!」
その2人の返事を聞き、さくやはあることに気がついた。
いつもなら一緒に聞こえるあの声が、聞こえない。
さくやは周囲を見回したがやはり姿はない。
さくや「……あの。」
ゆづき「どうしたの?」
さくや「なつきは、どこに?」
ゆづき「さっき、知り合いに声を掛けられていたようだからおいてきたわ。」
さくや「そういうことは先にいってください……!」
さくや(なつきは余計なことをすることがあるから目の届く位置のおいておかないと……!)
保健室の扉を開けるさくや。
その扉の向こうには探していた声の主の姿があった。
なつき「? どうしたですか? なつきを探してたですか?」
さくや「び、びっくりしたわ……突然出てこないで欲しいものね。」
なつき「なつきを幽霊みたいな扱いしないで欲しいですよ。でも、何も言わずにおいていく方も悪いのですよ!?」
ゆづき「ごめんなさい。せっかくの昔の友達みたいだったから。止めるのもどうなのかなと思って。」
なつき「もう~ ゆづき先輩ってば本当に優しいんですから~!」
なつき(確かめるチャンスです! ここを逃したらもうできないと思ってやるしかないですね。)
さくや「なつき、貴方の昔の友達って?」
なつき「ああ、ダイのことですよ~ ゆづき先輩は友達といいましたが、友達ではなく従兄弟なんです。一緒のタイミングで入学して、学院であまり顔を合わせなかったので久しぶりにちょっと話をしていたのですよ。」
さくや「そう、従兄弟……」
なつき「どうかしました?」
さくや「いえ、何も。」
さくや(……なら、問題はないわよね。)
ゆづき達6人は図書館に入ったところで掲示板の前の椅子に座るエルフが声をかけてきた。
ロビン「よお。久しぶり。」
ゆづき「あなたは、確か。ロビン、だったわね?」
ロビン「覚えていてくれるなんて光栄だね。そういえばあの時、あんたが一番あっさり俺を通してくれたっけ。だからかな?」
ゆづき「貴方は印象に残ってたから。それだけよ。」
さくや「貴方がいる、ということはヒルター様も今ここに?」
ゆづき「そうね、今なら学院にいるということ。いつの間に戻ったのかしら……ねえ、何処にいるか知らない?」
なつき「そんなの聞くよりさっさと探しにいった方が早いです! カスミ、ツカヅチ、ローズ! いくですよ!!」
ローズ「ちょ、ちょっとまってなつきちゃん! ほら、一応、失敗に終わったのをみてからでも遅くは……」
なつき「遅いです、遅すぎるです! ほら、いくですよ!!」
カスミ「なつきちゃんったら強引だなぁ……じゃあゆづき先輩、さくや先輩! あたし達先にいってますからねー!」
ツカヅチ「あの、合流地点は……ちょっと、先にいかないでください!!」
ローズ「そ、そんなに目で訴えなくてもわかりますから、さくや先輩……い、いってきます。」
さくや「本当、困ったものね。」
ロビン「手間がかかる後輩ばかりだと大変そうですね。先輩方?」
ゆづき「どうして、先輩だって?」
ロビン「だってさっきのフェアリーの子、俺と同期だし。」
さくや「貴方はヒルター様と同期かと思っていたけど違ったのね。」
さくや(……同期? ……なつきがさっき話したという従兄弟も、同期……これは、偶然?)
ロビン「そう見ていただけるなんて嬉しいね。さて。今回は。」
さくや「ナンパでもする気なのかしら? あいにくお断りよ?」
ロビン「知ってるって。でも。あんたが俺とデートしてくれたらヒルターの居場所、言ってもいいぜ?」
さくや「なっ!?」
ゆづき「……さくやが、いいの?」
ロビン「ああ、どうもナーシャは俺にはそれほど気がないらしいし。だったら、他当たるしかないじゃん? こんな姑息な手段だけど。せっかくヒルターがいるなら使わない手はないだろ?」
ゆづき「さくや、どうするの?」
さくや「こんな条件、蹴るに決まっています。」
ロビン「じゃあそっちのあんたでもいい。デートしてくれ。」
ゆづき「……さくやといったり、わたしといったり。節操なしもいい加減にしないと嫌われるわよ。」
さくや「そうよ、そもそもこんな奴とヒルター様をいかせてしまったなんて……! ゆづき先輩だってデートするわけ」
ロビン「返事はどっち? 『ゆづきさん』、貴方の返答を聞かせてよ。さくやさんじゃ、なく貴方の、ね。」
ゆづき(!)
さくや「まるでわたくしが勝手に決めたかのように言うのね。」
ロビン「あんたには聞いてないって。ゆづきさん?」
さくや(わたくしに聞く気がないなら何故最初にわたくしに話を振ったのよ……! 何? こいつの意図は……何? まさか、ゆづき先輩……!)
ゆづき「本当に、それで言ってくれるのね?」
ロビン「ああ。約束する。」
さくや(止めないと!)
さくや「こんな奴が約束なんて守るわけ」
ゆづき「さくや。これは、『わたし』とロビンの話だから。……いいわ。約束よ? 破った時は、覚えておきなさい。約束を破られるのは、嫌いなの。一生恨まれる。それぐらいの覚悟を持ちなさい。」
ロビン「ああ、絶対破らない。安心してくれ。」
さくや「……!」
ゆづき「さくや、残りの子達、しばらくお願い。」
さくや「……わたくしが、納得するとでも?」
ロビン「あんたが納得しようとしまいとこれは俺とゆづきさんが同意した話なんだ。残りの連中の面倒はともかく、ゆづきさんと俺のことで、あんたが今更割り込むのは変だろ?」
さくや「……そもそも」
ダイ「あ、ロビン~!」
ロビン「お、ダイか……絶妙なタイミングだな。」
ダイ「ごめんごめん、遅くなって……あ、この人たちって。」
ロビン「そ、俺がヒルターと掛け合う時に、邪魔した人たち。だけど話してみると結構いいぞ?」
ダイ「ま、また迷惑かけて……! ご、ごめんなさい!」
さくや「ごめんなさいというぐらいなら、ロビンを連れて行ってくれないかしら?」
ゆづき「……さくや、わたし、まだ約束守ってない。」
さくや「あんなの約束にはいりません!」
ダイ「え、えっと?」
ロビン「俺はゆづきさんと約束したのになんであんたが約束じゃないなんていうんだよ。本人達が約束したって言ってるのに。それ以上に信頼性のあるものなんてあるのかよ?」
ダイ「え? 約束って?」
ロビン「聞いてくれ、ダイ! ちょっと強引な手段つかっちまったがデートできるんだぜ、デート! だからお願いがあるんだ、お願いが。」
ダイ「何? ロビンのお願いなら仕方がないから聞いてあげるよ?」
ロビン「お前も酷くなったよな~ まあいいさ。俺、誰にも邪魔されずデートしたいからさ。お前このさくやってエルフなんとかしてくれ。」
さくや「……わたくしを、邪魔者扱いだなんていい度胸ね……」
ダイ「あああ!? なんでこんな危なそうな人の面倒を押し付けようとするの!? ボクじゃ無理だよ!」
ゆづき「……さくや。どうも貴方。第一印象が相当悪いみたいよ……?」
さくや「うっ……で、ですがゆづき先輩のためなら別にそれぐらい」
ロビン「ん~? あんたはヒルターの親衛隊じゃなかったけか? なんでここでゆづきさんのためなら悪役でもする、みたいな台詞が出てくるんだ? ヒルターのためなら、ならともかく。さっきからあんた、ゆづきさんのなんなんだ?」
さくや「……!」
ロビン「さて、ゆづきさん。ここはダイに任せていっちゃいましょう。」
ゆづき「でもまだ、話は」
ロビン「この調子で話してても終わりませんって。ほら、いきましょう? さっさと終わらせてヒルターに会いたいんでしょう?」
ゆづき「え? え、ええ……その、さくや、あとはお願い。」
さくや「……」
ゆづき(さくや、ごめんなさい……貴方のことがどうでもいいわけじゃ、ないの。わたしは、わたしの意志で行動しないと。……約束、守れないの……)
なつき「ぜんたーい、止まれ! ですよ!」
カスミ「えええ!? まだここ、図書室からそれほど離れてないよ!?」
ローズ「ううん、ここでいいの。」
ツカヅチ「え? それはどういう……」
なつき「はぁ、もう一人いるってローズだったのですね。……ダイには後できちんとおごってもらわなくちゃですよ。」
ローズ「え、ダイって、誰……?」
なつき「こっちの話ですよ~」
カスミ「えっと。あまり話が見えません! 説明を要求するよ!!」
ナーシャ「はぁ……ロビン、これは人選ミスでしょうが……なんでワタシが、その他エキストラへの説明役なのよ。上手く説明できるとでも思ってんの……?」
ツカヅチ「え? 貴方は?」
ローズ「……私これは聞いていません!」
ツカヅチ「え!? なんでローズさん、私の後ろへ!?」
なつき「あー さくや先輩と見間違えたというのならすこしわからないでもないですよ~ 声も若干似てますですし。」
カスミ「た、確かに。でも乱暴な感じがするし、本当、ぱっと見たときだけだよね。髪色も違うし。」
ローズ「……ううん、先輩じゃないエルフだから不味いの! お願い、お願いだから気づかないで……!」
カスミ「?」
ナーシャ「あんた達はワタシと誰を見間違えているのよ……! というか初対面の相手にいう台詞じゃないわよね、それ……!」
ローズ「えっと。説明は私はいいので! なつきちゃんもみんなも、ごめんなさい! ちょっと私は急ぐので!」
なつき「はいはい~ しくじったらなつきからもオシオキですからガンバですよ~」
ローズ「そ、それは勘弁してください……!」
カスミ「???」
ナーシャ「……あら、あの子は、もしかして……」
なつき「あー とりあえず話して欲しいのですよ~ フォローぐらいは、なつきがしますですからね。」
ナーシャ「え、ええ? 多分反発されるだろうって言われていたのだけど……段取りが変わったのかしら?」
なつき「なつきは緊急参戦ですから!」
ナーシャ「そ、そう……ああ、でも。あんたみたいなタイプがフォローしてくれるなら確かに。ワタシでも何とかなるかもしれないわね……」
なつき「ダイからは聞いてるですよ~ 結構口下手だけど優しい赤毛エルフの人に引き止められるはずだから手伝って欲しい~って。だからあえて立ち止まったですよ。」
カスミ「まって、まった、なつきちゃん!! 引き止められる予定だったんなら別に立ち止まる必要もないよね!?」
なつき「アドリブ力を試したですよ。」
ツカヅチ「なんですかその理由は!?」
なつき「だって、ただ実行するだけなんてなつき、つまらないですから!」
ナーシャ「あ、ああ、そう……そうなの? ……調子、狂うわね……」
ロビン「ささ、こっちですよ。ゆづきさん。」
ゆづき「……ところで。デートって。なに?」
ロビン「……はい!?」
ゆづき「言葉の意味じゃないのよ? わたし、こういうことにはあまり興味がないから……具体的にはどういうことなのかしら、と思って。」
ロビン「こ、これは結構手ごわい……まさか、意味もわからずついてくるなんて思ってもなかったぞ……!」
リュー「ロビン……本気でデートに持ち込もうとしたわね……?」
あっちゃん「ああ、無駄無駄~ ゆづき本当にそういうの疎いから~」
ゆづき「リューにあっちゃん……? どういうこと?」
ロビン「ちょ、ちょっと待って? 少し出てくるのが早くないか?」
リュー「この状態で、待ってろってのが無理でしょ。」
あっちゃん「そうね~ ロビンがゆづきと本気にデートなんてできるわけがないけど、デートとは何ぞやを説明するだけで絶対日が暮れちゃうからね~ 待ってられるわけないじゃない~」
ロビン「そこまで言い切られるぐらいの人なの、この人!?」
ゆづき「とりあえずその質問にははいって、答えておくべきかしら?」
ロビン「……じ、自信もっていわないでください……」
ゆづき「でもなんとなくわかったわ。リュー、あっちゃん……わたしと話がしたいということ? さくや抜きで?」
あっちゃん「そこまでわかってくれれば話ははやいわ~」
ゆづき「……貴方、演技だったの?」
ロビン「まさか。できれば、このあとでもいいからお願いしたい所ですよ。」
ゆづき「……考えておいてあげる。」
あっちゃん「なかなか優しいこというわね~ というわけでロビン君?」
リュー「早くナーシャのところに行ってあげなさい。たぶん苦労していると思うから。」
ロビン「そっちは援軍頼んだから大丈夫だったんだけどなぁ……ま、いくかな。くれぐれも、短気に走るなよ? あっちゃん。」
あっちゃん「わたしをなんだと~ ……といいたいところだけど前科があるから文句も言えないわね~ 了解よ~」
リュー「さてと……あまり長い間引き止められるとは思えないし。さっさと本題にはいろうかしら。」
ゆづき「……そうね。」
さくや「……」
さくや(何故、わたくしはここに放置されているの?)
ダイ「え、えっと……ボクも、突然こんな形で残されると、困っちゃうんですけど……その。」
さくや「……」
さくや(何故、先輩はわたくしを置いていったの? ……違う、わたくしはいつだって、ついていかなければ1人……)
ダイ「いや、ですからね? ボクもそれほどこんなことには乗り気じゃないんです。でも仲間を思うとですね……」
さくや(……こんな奴にも、仲間がいるのに。わたくしは、1人……いや、いるじゃない。1人、1人だけ……行かないと。こんな奴に、構っている場合じゃないわ。そもそも……なつきは同期の従兄弟と話した直後、ロビンが現れた。そしてロビンはなつきを同期と呼んだ……となると従兄弟は、このフェアリーである可能性が非常に高い……ならばこれは、最初から計画されていた……わたくしを、1人にするために。許さない……)
さくや「誰を、待っているのかしら?」
ダイ「え、え!? だ、誰も待っていませんよ!?」
さくや「それほど話が上手い類ではないでしょう、貴方。」
ダイ「え、そ、そうですけど……」
さくや「わたくしとゆづき先輩を引き離す作戦……にしてはわたくしへの足止めの仕方が貴方では、雑すぎません? わたくしが強引に行く可能性も配慮すべきでしょう?」
ダイ「そ、その通りです……」
さくや「ですので。わたくしが動かないのは。動いた後に何か控えているのではないかという警戒からです。……そこまでさせているのに、ない、と?」
ダイ「えっと。その、それは……!?」
ヒルター「流石だな。さくや。」
さくや「ヒルター……!?」
ヒルター「まさかオレが足止めに出てくるとまでは想定していなかったようだな。お前をよく知るアサミン先輩の提案なだけある。」
さくや「アサミン? 何故、そこでアサミンが……」
ヒルター「たまたま数時間前、ここであってな。それでお前達についてちょっと、な。」
さくや(アサミンまで!? まさか、全て、話してこれが計画された……? なら……)
さくや「……ヒルター様は、アサミンを信用すると?」
ヒルター「オレは、アサミン先輩達と会い、お前達について話したことしか言っていないが? どうしてアサミン先輩を信用する、しないの話になる? お前は問い詰められる理由が、わかっているんだな?」
さくや「……!?」
さくや(何を早とちりをしているの、わたくしは……そうよ、アサミンの名前が出ただけじゃない。まだ、具体的な話は何も……本当、何をして……そうよ、ごちゃごちゃ話している時間なんて、わたしにはないのよ! そうよ……)
ヒルター「さすがのさくやも、この状況下では焦るか。だがオレはお前を問い詰めるつもりはない。今は、ゆづきに時間をやって欲しい。」
さくや「……お断り、させていただきます。」
ダイ「え、ええ!? さっき、何飲みました? な、なんで武器を構えるの!?」
ヒルター「まさかこんな展開になるとはな……いいだろう。オレが力づくでも止めて見せよう!」
ダイ「な、な!? ど、どうしよう!?」
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