2010年12月10日~12日に公開しました親衛隊第7話です。
5更新分です。
タケシ「ほいっす!」
ミュール「やあぁああ!!」
なつき「いくですよ!」
ツカヅチ「は、はやい……」
さくや「驚いたわ。速度って、武器なのね。ツカヅチ以外みんな早いと実感できるわ……」
なつき「そうですよ~ フェアリーの武器の一つです! パーティーの誰よりも攻撃するのが早い……のがウリなのにこのクラッズ!!」
タケシ「タケシっすよ! これで何度目っすか!? オレっちの名前!!」
なつき「どうでもいいですよ~! なつきの出番奪って楽しいですか!? 楽しいからするんですよね!?」
タケシ「それはそっちが鈍足なのが悪いっす! それにオレっちのほうが先輩なんだから『タケシ先輩』って呼ぶべきっすよ!」
ミュール「あたし以上に苦手な相手がいたのね、タケシ……」
ゆづき「なつき、そこで止め。宝箱があるわ。タケシくん、お願いできる?」
タケシ「お安いご用っすよ! はいはい、さくっと解除っすよ~!」
ツカヅチ「カスミさんはまだ盗賊検定を受かっていないから……盗賊がいると本当に助かるね。」
なつき「出番はここだけですよ、クラッズ。」
タケシ「だからオレっちの名前はタケシっす!!」
ゆづき「……さくや。」
さくや「はい?」
ゆづき「……もしかして、いらいらしてたり、する?」
さくや「え、そんなわけないでしょう? 殲滅速度は速いし、今まで時に諦めなければいけなかった宝箱を取りながら進める。いいトレードだったと思いますよ。」
ゆづき「……そう?」
さくや(だけど! まずアサミン提案というのが第1に気に入らない理由。第2に……)
ミュール「……(チラッ)」
さくや(あのミュールっていうフェルパーが何故かゆづき先輩を時折気にしているのは何故? あのアサミンの側にいたフェルパーだからそれほどまともな部類じゃないんだろうけど……そして最後に)
なつき「やーい! ここまでこれるですか~!? このチビ!」
タケシ「自分だってチビの癖に人のことをチビって言わないで欲しいっす!! それはいったんゆづきさんに預けるんっすから返すっすーー!!」
さくや(うるさい、ああ! なんってうるさいの!? これじゃあカスミの時と変わらない……いや、それ以上だわ! カスミはまだ女だったからよかったものを……! アサミンの奴、ここまで計算してトレードしたわけじゃないわよね……!)
ゆづき(間違いなく、いらついてる……さくやがここまで表立っていらつくことなんて珍しいの……あれ、わたし、さくやがいらついている様子って見たことあったかしら……でも珍しいと思うということは、あるってこと……?)
ツカヅチ「あ、私、完全に蚊帳の外ですね……ですよね。私だけは完全なモブキャラですもんね……」
一方、そのトレード先はというと……
アサミン「~♪」
ローズ「アサミン先輩、ローズガーデンについてからやたらご機嫌ですね。」
タスク「だな。さっき街の人から話聞いてたけどそのあとからだよな、やたら上機嫌なのって。」
ちあき「でも、喜ぶような内容でもなかったわよね? 6人パーティーが騒ぎながら冥府の迷宮に向かっていった、ただそれだけなのに。」
カスミ「騒がしい、か~ あたしがいないのに騒いでるのかな~ なつきちゃんなら可能だろうけど! それとも別のパーティーかな? どっちだろー あってみたいな~!」
ローズ「ちょっと回復に難があったり、カスミちゃんが宝箱開けれなかったり、鈍足だったりと問題点は多いけど安定はしているからなんとかなりそうですね。私たち。」
アサミン「そうね、まああせらずにここを拠点として行き来しながら攻略しましょう? それほど急いでいるわけじゃないからね。向こうと違って。ふふっ♪」
アサミン(今頃さくやの奴はうるさいうるさい思いながら、それを言えずに進んでいるに違いないわ。ボロ出すのが怖くてゆづきの前だけはやたら自重してるからね、あいつ。まったく、それぐらいのリスク無視すりゃいいのに。でもせめてこれぐらいはしてやらないと、腹の虫が収まらなかったのよね~ しかもまだうるさいだけは序の口よ……)
マクスラーク(相手の行動を制御してはめるのがさくや君なら相手の動きを読んだ上ではめるのがアサミン君……相性が悪いのは知っていたが……ここまで悪化していたとは。ふむ。事は急がなければいけないようだな。)
ツカヅチ「あ、次の階層へのワープポイントですよ?」
ゆづき「まった。」
ミュール「え、さっさと乗って先に……」
さくや「さっきもありませんでした? ワープポイント。」
タケシ「えっと。こういうときこそ地図っす……あー、本当っすね。これ2つ目っす。」
なつき「なつきにも見せるです! あ、本当ですね~ もしかしてこの迷宮って相当広いのかもしれないですね!」
ゆづき「それもそうだけど……敵の強さがどれくらい上がっていくのかが不安ね。今で結構ギリギリなのに……」
なつき「それはタケシが転がりすぎなのが悪いのですよ!」
タケシ「それでもオレっち以外前出れる人いないじゃないっすか!?」
ミュール「そうよね、あたしとゆづきの2トップじゃ結構厳しいし。」
さくや「……次の階層は、後ろも攻撃してくる敵がでてくるから、結局同じよ。」
なつき「? なんでさくや先輩ちょっと怒ってるですか?」
さくや(……アサミン、もしかしてこれも計算に入れてたのかしら? わたくし達がここに初侵入し時、第2階層で集中砲火を受けたわたくしが倒れて、それで今でも嫌いとしていることを……! なんって奴なの……戻ったら許さない……!)
ツカヅチ「さくや先輩……お願いですから、武器がきしむ音が聞こえるぐらい強く握るのは止めて下さい……」
一方、そのトレード先はというと……
マクスラーク「そういえば、ローズ君? 君が倒れたのは寝不足だったらしいが、どうして昨日は眠れなかったのかな?」
ローズ「え?」
マクスラーク「だってそうだろう? 1日目、2日目については僕も納得行く理由を聞いたよ。だが3日目、昨日だけは、その話題に行くと一切口を閉じてしまう。」
ローズ「えっと。それはその……」
マクスラーク「……話をかえよう。昨日、アサミン君と知り合ったというが。もしかしてその場にさくや君もいたかい?」
ローズ「ええ!? 何故それ……あ」
マクスラーク「大丈夫。それについては知っている。何故なら彼女を呼んだのは僕だからね。」
ローズ「貴方だったんですか……神様は!」
マクスラーク「僕は神様なんて偉いものではないよ……だが、そうだね。そう思ってくれているのなら1つだけ、教えてくれないかな?」
ローズ「なんでしょう? 怒られないことなら1つだけお答えしますよ!」
マクスラーク「はは、君はなかなかノリがいいね……アサミン君とさくや君の間には、何か人様にいえない隠し事がある。これは、間違いないのかな?」
ローズ「……というか、信じてもらえるのかが怪しいです。」
マクスラーク「一体どんな内容だったのかね……いや、これは質問ではなく独り言。ここからが本題だ。君は、もしかしてアサミン君から聞いたかな? ゆづき君のことを。」
ローズ「……な、なんでわかるんですか?」
マクスラーク「あの2人の共通項はゆづき君ぐらいしか見当たらないからね。その2人が会話をしたという。ならば会話の内容はおのずと1つに絞られる、ということさ。」
ローズ「……そうですね。普段のお2人しか知らないのなら、そうなります。」
マクスラーク「他にもあると。……いや、言わなくていいよ。ありがとう。参考になった。」
ローズ「……? 特に内容とかはよかったのかな……」
ローズ(でも、言えないよね。ゆづき先輩が記憶喪失だなんてこと。そんなこと、突然言っても信じてもらえないよね。)
ゆづき「まさか、この槍を使うことになるとは思ってもなかったわ。」
ミュール「そんないいもんあるなら先に使いなさいよ……!」
さくや「秘蔵の武器ですからね……それ。」
なつき「そういえばなつきもはじめてみるですよ、その武器。」
タケシ「どうやって手に入れたんっすか、それ? 結構作るの大変な武器っすよ?」
ゆづき「どうやってだっただろう……多分、錬金。」
なつき「そうでしょうね、そうだと思うですよ? でもどうやって錬金したのかが重要であって、その答えは誰も待っていなかったと思うですよ?」
ゆづき「そうなの?」
ツカヅチ「……それより、私はさくや先輩のやたら魔法攻撃力の高いハープの方が気になります。」
さくや「ああ、ハープ-8のこと? ユニークがついていて魔法攻撃力+25だから使っているのよ。タケシさんが開けた宝箱にあったから使っているのよ。」
なつき「でももう物理攻撃する気全然ないですよね、その装備!」
さくや「ええ。」
なつき「火力が足りないのはさくや先輩のせいじゃないですか!」
さくや「あら、回復できなくていいなら、攻撃するわ?」
なつき「それじゃあ困るですよ! きちんとMP配分を考えて行動するですよ!」
さくや「なら貴方が指示を出して? 確かにわたくしも防御ばかりはつまらないですから。」
なつき「ゆづき先輩じゃないんですから自分で考えて動くです!!」
ゆづき「ねえ、ツカヅチ……わたしって、自分で考えて動いているように見えないのかしら?」
ツカヅチ「そんな、本当にわからないんだけどという顔されて尋ねられても困ります……!」
ミュール「あのなつきって子、面白いわね~ ああいうのを相方にしたいわ。」
タケシ「勝手にするっす……って、ミュール、あんたさりげなくさっきからオレっちらのこと庇いまくりじゃないっすか?」
ミュール「ちあきにもアサミンさんにもくれぐれもみんな無事に戻ってくるように、って言われているからね。この中で一番HPの高いあたしが壁やってれば、大丈夫でしょ? 後ろも守れるし。」
タケシ「本当、ちあきさんと仲いいんっすね。」
ミュール「そりゃね。あたしが普通とは違うな~って自覚し始め頃だったかな……ちあきと会ったの。」
タケシ「……だから、他の変人の皆さんとはちょっと毛色が違うんっすね、ミュールは。」
ミュール「うるさいわよ、茶々入れないでよ。」
タケシ「で……あ、またワープポイントについちゃったっすね。」
ミュール「本当ね。この話は、またタスク達と一緒にいるときでいい?」
タケシ「いいっすよ。話ぐらい、いつだって聞いてやるっす。」
ミュール「上から目線ねぇ……まあいいけど。」
ゆづき「ミュール、タケシ。」
タケシ「ん? どうしたっすか、リーダー。」
ゆづき「どうもここ、先に人が通ったらしいの。……まだ奥に怪我している人がいるからお願いしたいって、頼まれたんだけど……」
ミュール「行きたいの?」
ゆづき「でもさくやがそこまでする義理はないはず、とも言うし……」
タケシ「なつきさんとツカヅチさんはどうなんっすか?」
ゆづき「なつきは、困っている人がいるなら行くべき、って。ツカヅチはわたしに任せるって……」
ミュール「なるほど。行くか行かないか迷ってるわけね。」
タケシ「リーダーの思ったとおりにすればいいっすよ? オレっち達はついてきているだけなんっすから。」
ゆづき「……でも、いいのかしら? わたしが、決めても。」
ミュール「いいっていってるんだからいいの。ツカヅチも含めて3人があんたに任せるって言ってるんだから。あんたが選んじゃっていいと思うわよ。」
ゆづき「そう? そう……なら。行こう、奥へ。薬があるんだもの。助けれるものなら助けたいわ。」
タケシ「了解っす!」
ミュール「じゃあ、あたしが他の3人呼んでくるわ。ゆづきはここで待ってていいわよ?」
ゆづき「任せてばかりなのも悪いから、わたしもいくわ。この先の構成も相談したいし。」
ミュール「あ、決めると結構頼もしいわね、その調子で最後までよろしく!」
ゆづき「……うん、頑張る。ありがとう、ミュール。」
ミュール「ここの辺りっぽいわね。」
さくや「そのようね。……薬の瓶がいくつか落ちてるし。」
ツカヅチ「この階層に入ってから多いですよね……」
さくや「昔は英雄学科の先生がこの辺りで討伐をしていたりしたけれど引退してしまったから……最近は卒業生がここの討伐をしているらしいわ。そのせいでなのか知らないけれど、このクエストも最近よく掲示板で見るの。けが人が多いってことでしょうね。」
タケシ「え、そうなんっすか?」
さくや「ええ。あまり気にされてないようだけど。で、薬の空き瓶がやたら多いのは、クエストで使われた瓶が投げ捨てられているから。マナーが悪いわよね。」
なつき「さくや先輩にマナー云々を言われたくないと思うのですよ?」
さくや「なつき? 最近喧嘩を売ってくる回数が増えていないかしら?」
なつき「それはさくや先輩が売られるような展開に持ち込む回数が急増しているからだと思うのですよ!」
ツカヅチ「お二人ともやめて……なんだか嫌な感じがしますし……」
ミュール「確かに。何が出てもおかしくなさそうよね。」
タケシ「……ミュール、残念ながら前、前に出てるっすよ?」
ミュール「にゃ!?」
ゆづき「……みんな、マイペース過ぎるわ……くるわ、構えて!」
さくや「なつき、今回は貴方にお願いがあるのだけれども。」
なつき「なつきにですか? なんです、改まって珍しいですね?」
さくや「貴方補助魔法使えたわよね……相手の回避低下のも、使えるぐらいまで履修しているのかしら?」
なつき「ダシルドですかね? 使えるですよ? でもそれがどうかしたのです?」
さくや「あの奥のミミズにかけて欲しいの。」
なつき「ええ!? あんなでかいのなら普通当たる……」
ゆづき「やあ……あら?」
ミュール「ゆづき! さっきからなんで外してばかり……!」
ゆづき「……この槍の難点。すこし、命中が悪いの……重たいからやたら力いるし……」
タケシ「な、なんでそんな致命的な欠点のある武器を切り札にしてるんっすか!?」
さくや「……と、いうわけよ?」
なつき「……了解です。なつきが生きてる限りかけつづけるです。」
ストーンワームが大きく身震いをすると、周りの大地がまるでクエイクガンが放たれたかのように隆起する。
さくや「……だから、後ろに攻撃しないでって言ってるのにっ……」
ミュール「全体攻撃までは庇いきれないわ……」
タケシ「魔法攻撃なんて卑怯っす! 避けれるわけないじゃないっすか!!」
なつき「プロトムが少し間に合わなかったですね……」
この強力な一撃に一掃されていくメンバー達。
先ほどの攻撃で残ったのはゆづきとツカヅチの2人だけ。
ツカヅチ「ど、どうしましょうか……先ほどの攻撃がきたらもう、ヒールでも間に合いません……」
ゆづき「相手にダメージは入ってる。もう、きっと相手もギリギリ……どうせやられるのなら……!」
ツカヅチ「ちょ、ちょっと、先輩!?」
ゆづき「やあああ!」
ゆづきの捨て身の一撃は相手を倒すには十分な一撃であったようだ。
大きな雄たけびとともに崩れ落ちていく。
ツカヅチ「……お、終わりましたか? よ、よかった……」
ゆづき「まだ終わってない……向こうにいる人達に、薬、渡さないと。」
ツカヅチ「薬が必要なのは私達ですよ……」
ゆづき「まったくね……さて。戻りましょう。ローズが心配。」
おまけ
ストーンワーム戦の少し前のこと……
タケシ「そういえばみたっすか、ミュール?」
ミュール「ああうん。すぐに隠れちゃったみたいだけど明らかにあれタスク達だったわよね。……あたし達抜かれてない?」
なつき「え、ちょ、ちょっと待つです! あのドワーフ、ローズをどうしたですか!?」
ミュール「あたしの毛よりちょっと薄い感じの紫の髪のエルフよね、ローズって。なら一緒にいた気が……」
なつき「ローズ! 何元気になってついてきてるですか!! 戻ってきたらとっちめるですよ!!」
ミュール「えーっと。この超スローペースの進行速度なら、抜かれても別におかしくない気もするんだけど?」
ツカヅチ「ミュールさん、すみません……そのポジションはいつもローズさんとカスミさんのポジションだったから……」
ミュール「あ、そうなの? いつもこんな感じ? 大変ねぇ~ あんた達。」
----↑ここまで↑----