2010年11月25日~27日に公開しました親衛隊第4話です。
3更新分です。
----↓ここから↓----
なつき「もー飛べないですよ! プリシアナッツの所には誰もいないし、とんだ無駄足だったのですよ!!」
カスミ「しょうがないよ。今日は宿に止まってまた明日にでも……あれ? ゆづき先輩は?」
ローズ「そういえば……」
さくや「みんなが寒いと訴えていたのを真に受けて暖かい毛布か何かないか、買出しに行ってしまったわ……」
ツカヅチ「そこで我慢させる、という考えがないの、あの人?」
なつき「もーーー!! 本当にあの人は馬鹿みたいに優しいんですから! 少しぐらい冷たくされても、この面子は全然かまわないのにー! なつきは先輩と一緒にいたかったのですよーーー!」
さくや「……」
ゆづき「……すみません、これくらいしかお出しすることはできませんが……」
街の人「いいのよ、この付近は本当に寒いからねぇ……風邪を引かないように気をつけてね?」
ゆづき「はい、ありがとうございます。」
ゆづき(さて、戻ろう……! あ、あそこにいるのは、まさか……!)
スノードロップの街の住人に事情を話し、毛布を6セット譲ってもらったゆづき。
街の住人に頭を下げ見送り、戻ろうとふと街の入り口付近を見たゆづきは、
今まで自分が探していた人物を目撃する。
ヒルター「最後の最後まですべりまくりだったな……」
ナーシャ「本当、寒いは後ろに攻撃する敵がいるわでもう最低。二度と行きたくないわ。」
ゆづき「ヒルター様!」
ゆづき(行くべき? 今しか……あら? あれは。)
しかし、ヒルターに続く人影を見て、一度は踏み出そうとした足を止めることとなった。
ロビン「ナーシャはご機嫌斜めだからな……こりゃ、骨が折れそうだ……」
ダイ「で、でも説明しないわけにも……」
あっちゃん「あら、言いにくいのね~ いいわよ、わたしがいってあげるわ~ ロビンくん、ダイくん。」
ダイ「あれ? さっきまで少し外してましたよね? いつの間に……それに今ご機嫌最悪ですよ、ナーシャさん。だ、大丈夫ですか? あっちゃんさん?」
あっちゃん「いいのよ~ あの子からかうの好きだし~」
ダイ「か、からかうって……!」
リュー「はぁ……本当性格悪いわねぇ、あんた……」
あっちゃん「じゃあさっくりいってくるわ~」
ゆづき「あっちゃん……リュー……一緒にいたの……」
黒髪のバハムートと白髪のフェルパー。
それがリューとあっちゃんであることを確認し、足を止めるゆづき。
ゆづき(どうしよう。会うべきかしら? でもあっちゃんとリュー……さくやに止められてるし。……でも今は……さくやはいない。)
再び足を動かそう。そう思ったのだが。
ゆづき(……でも、さくやとの約束、破るわけにもいかないし……)
さくやとの約束。それを思い出すたび足を止めてしまう。
それを何十回と繰り返した、その時。
あっちゃん「……」
ゆづき「……あっちゃん……」
あっちゃん「何しに来たのよ? ヒルター様に言われてクエストこなしてたんじゃないの? どうして追いかけてきてるの? あの時のこと、わたしは許してないんだからね! ちゃんと理由を言うまではあわせないわ!」
ゆづき「あの時? ……ごめん、わからない。」
あっちゃん「そうやっていつもいつも! どうして! そうよね、わたしなんてどうせどうでもいいもんね? リューとさくやさえいれば、それでよかったもんね?」
ゆづき「……?」
あっちゃん「それすらも、わからないとかいうの? わたしをおちょくって楽しい!? 楽しいからしてるのよね!? ……だから、許せないの!」
ゆづき「……わたしは」
あっちゃん「さくやの言い分だってわたしは納得していないけれど……貴方のその態度が事態をややこしくしてるって、わからないの!」
リュー「あっちゃん! ……ゆづき!?」
あっちゃん「! り、リュー……な、何をしに、きたの~?」
リュー「あんたが先にいくから……でもなんで、やっぱりゆづき? 間違いなくゆづき! さくやなしだったから本当かどうか、アタシもちょっと自信なかったけれど。」
ゆづき「……ヒルター様にも、言われた。……あ、そうだ。」
リュー「なに?」
ゆづき「ヒルター様に言われたの。……ねえ、わたしとあなたたちは、どういう関係?」
リュー「……!」
あっちゃん「……ふざけすぎね……いくわよ、リュー!」
リュー「え、ちょっと! あっちゃん落ち着いて!!」
あっちゃん「あんなのと話しても時間の無駄!」
リュー「でもさっきのは!」
ゆづき「いっちゃった……」
ゆづき(あんなの、か。……そうよね。ヒルター様にわたしがさくやの操り人形だなんていうぐらいだものね……わたし、何も解決していないのに、ヒルター様と会おうとしてた……ダメね、わたし……)
なつき「ああ! 先輩ー! 遅かったからそろそろ探しに行こうかと思っていたのですよ~!?」
ゆづき「ごめんなさい。」
さくや「……?」
カスミ「本当ですよ! 少しぐらい寒いのは我慢できますけどやっぱり口に出ちゃいますからね~ でもそれをいちいち本気にしなくていいですよっ、先輩♪」
ツカヅチ「本当、心配性ですね。私達は大丈夫ですから。」
ローズ「さて、どうします? またプリシアナッツの所へいってみますか? 張り込めば多分会えますよ? さっきこの付近でヒルター様らしき人影を見たという情報が」
ゆづき「……張り込むなら学院で。そっちの方が安全だし、快適。」
なつき・カスミ・ツカヅチ・ローズ「ハァッ!?」
なつき「ちょ、ちょっーーーーーーーとまつですよ、ゆづき先輩? ヒルター様は、プリシアナッツのクエスト中なんですよね?」
ゆづき「古い情報かもしれないでしょう? なら、クエストの報告のために必ず戻ってくる学院で張るのが正解。」
なつき「でもでも! それだと! ここまで出てきた意味がないのですよ!?」
ゆづき「なつきのクエスト、すぐにこなせることが確認できたついでで、いいよね? そうだ、学院に戻ったらせっかくだから貴方達全員のクエストをみてあげるわ。」
なつき・カスミ・ツカヅチ・ローズ「はぁーーーー!?」
なつき「どうしたですか、先輩! いくらなんでもちょっとおかしすぎなのですよ!?」
カスミ「そうですよ! 先輩、あんなに一人ででもヒルター様に謝るって急ぎ足で……!」
ローズ「いくら面倒見がいいといってもここまで来るとやりすぎでは?」
ツカヅチ「下手をするとすれ違いばかりであえなくなる可能性も。」
ゆづき「悪いけどそう決めたの。嫌ならいいわ。わたし一人で学院で張り込んでるから。」
なつき「いやいや、先輩がそれでいいって言うんならむしろなつきは大歓迎ですよ? だって終わってないクエストまだまだいーーーっぱいありますから!」
カスミ「た、確かに助かるんですけど……ほ、本当の、本当に? いいんですか?」
ローズ「ゆづき先輩ほど、頼りになる先輩もなかなかいませんし……」
ツカヅチ「乗れるものなら乗ってしまいますが……」
ゆづき「さくや?」
さくや「! は、はい?」
ゆづき「他のみんなはついてくるって言っているけど。貴方はどうするの? 貴方はわたしよりもクエストすすめているはずでしょ? この話、貴方には何のメリットもないわ。できれば、手伝って欲しいけれど、無理は言わない。貴方は、どうしたい?」
さくや「え、えっと……」
なつき「その話ははじめて聞いたですよ~? というかさくや先輩の方が先!?」
カスミ「意外……たしかゆづき先輩の方が入学したの早いし、これって決めたら無駄なくてきぱきやっちゃうタイプなのに、それでも遅いなんて。」
なつき「それもそうですけど! もしかしてゆづき先輩とさくや先輩ってヒルター様のファンやり始める前からお知り合いなのですか!?」
カスミ「あっ、そうなるね! もしそうだとしたら興味ある!! 聞きたい聞きたい!!」
さくや「え、あの、それは」
ゆづき「2人とも。さくやが困ってる。さくや、どうするの? わたしと一緒に、面倒見るの? みないの? どっち?」
さくや「……やります。やらせていただきます。」
ゆづき「助かるわ。」
なつき「じゃあ続いてお2人の馴れ初めを」
ゆづき「明日も早いからさっさとみんな、寝なさい。明日は約束の雪原に加えて歓迎の森も一気に抜けるからハードよ。きちんと休んで。」
(バタン)
カスミ「ちょ!! ゆづき先輩いくの早すぎ!!」
なつき「あ! カスミ!! なつきが先なのですよ!!」
(バタン)
さくや「はぁ……あ、ツカヅチさんもローズさんも、早めに休んだ方がいいわよ。昨日でよくお分かりでしょう?」
ローズ「そ、そうですね……」
ツカヅチ「ゆづき先輩の朝はものすごく早い。今日はお休みさせていただきますっ。」
ローズ「? さくや先輩はどちらに?」
さくや「ちょっと外に。……部屋に戻ればうるさくなりそうだから少し街の様子を見てきます。」
ローズ「あの2人は揃うとうるさいですからね……あまり遅くならないようにだけ、お気をつけて。」
さくや「ええ。」
(バタン)
ローズ「……ツカヅチさん? 街で、情報集めてたときに、見たよね?」
ツカヅチ「……うん。いくしかないね。」
(バタン)
さくや(まさか、先輩がここでヒルターを諦めるなんて……いったい何が)
さくや「!?」
ブレーミー「え? さくやさん?」
さくや「な、なぜ……貴方が、ここに?」
ブレーミー「ボク? ボクはパーティーでたまたまここによってるだけだけど? さくやさんこそどうして? まさか、ヒルターさんを追いかけて? 無茶するなぁ。」
さくや「いえ……まあ、それもそうなんですけど。」
ブレーミー「それとも、アサミン? ボクの、姉さん探し?」
さくや「いるわけがないでしょう。あの人が、こんなところに。」
ブレーミー「それはどうかな? あの人も今、パーティー組んで色々クエストこなしているらしいから案外、会えるかもよ?」
さくや「他の場所なら可能性もあるわね。でも、ここはないわ。それにあの人にあって、わたくしが、何を話せと?」
ブレーミー「……はぁ、それをボクに聞かれても困るんだよね。正直ボクとしてはさくやさんと姉さんはいがみ合っていてくれた方が都合がいいもの。知ってたとしてもいわないよ。」
さくや「それもそうね。貴方に聞いたわたくしが馬鹿でした。」
ブレーミー「そうだよ。その通り。ボクは、ボクにとって都合のいいことしか言わないの。」
さくや「本当、あなたとなつきは似てるわ……本当、自分勝手な人達……」
ブレーミー「お褒めの言葉ありがとう。でもそれってさくやさんにだけはいわれたくない言葉なんだけど? ま、ボクはそろそろ戻るね。勝手に行動してたからそろそろ戻らないとシアンに怒られちゃう。じゃ、また、ね?」
さくや「はいはい……」
宿の入り口の影にて
ローズ「何だ……ただの偶然かぁ……」
ツカヅチ「確かショーゴさん、だっけ? カスミちゃんのお兄さん。あの人の姿が街で見えたから他にパーティーがいる。そんな状況でさくや先輩が1人で外へ、だから期待したんだけど……関係ないのか……」
ローズ「でも、これどう思う、ツカヅチさん?」
ツカヅチ「遠くてよく聞こえないけど……少なくとも、愛の逢瀬ではない事だけは確か。」
ローズ「この距離で聞こえないの? あれがさくや先輩なりの逢瀬という可能性は?」
ツカヅチ「むしろこの距離ではっきり聞こえるの? ローズさんって耳、いいんだね。でももしもそうなら、さくや先輩はまず間違いなくツンデレ学科も受講しているだろうね。」
ローズ「いやいや、私はね、さくや先輩なら十分にありうる話かと……」
さくや「わたくしが。どうして。ツンデレ学科を受講するという話になっているのかしら?」
ローズ・ツカヅチ「さ、さくや先輩!?」
さくや「……さて、貴方達には夜も眠れなくなるような、そんなこわーい話でもきかせてあげましょうかしらね?」
ローズ・ツカヅチ「ひ、ひぃぃぃぃーーー」
一方こちらはというと……
なつき「先輩先輩先輩先輩! ゆづきせんぱーい!!」
カスミ「もうゲロっちゃいましょうよ? ほら、この街に着てからのさくや先輩の様子といい、もう何もないなんて通じる状態じゃありませんってば!」
なつき「そうですそうです! それにさくや先輩から聞いたところで体よく追い返されちゃうのが落ちですしね!」
カスミ「あ、確かにそうだよね~! さくや先輩って自分が話したくないことは本当、さくっと切り上げてさくっと話題を切り替えちゃうから!」
なつき「ヒルター様の趣味の話から何故かお勉強の話になっていたことあるですよ~! 本当、さくや先輩ってあまりしゃべりたがらないけどしゃべると上手いですよね~」
ゆづき「……それは、さくやが上手いんじゃなくて、なつきやカスミが自分で脱線していっている結果のような気がするんだけど……」
なつき「おー! 先輩上手いこといいますねー そうなんですよ、なつきってしゃべりだすと止まらなくて、というかいいたいことがありまくりましてね~」
カスミ「そうそう、なつきちゃんと話すとなんだかよくわからないけど止まらなくて~!」
……という調子でまったく過去の話などふれることもなく夜が明けた。
一行は眠い目をこすりながらスノードロップを後にすることとなった。
おまけ
カスミ「そうだ、なつきちゃん! さっきね、ショーゴの幻影見たんだよ!!」
なつき「おお! 吹雪の夜は幽霊が出るって本当なのですね~」
ゆづき(吹雪いてない。全然吹雪いてない。)
なつき「おお! なつきにも見えるですよ! カスミのお兄ちゃんの幻影!!」
カスミ「なつきちゃんにも見える? いやー ショーゴがこんな所にいるはずないのにね! 今日は相当電波受信してるんだろうな~あたし!」
ゆづき(幻影でも電波でもなくあれは本物……しかし何故正座で座らされてるのかしら……)
----↑ここまで↑----