4更新、第2PT序盤の山場導入部です。お楽しみくださいませ。
暗き旅路の森を突き進む6人。
ここまでモンスターと戦い、十分に腕を上げていた6人はすんなりと森の先へ先へと進めていた。
この土地はドラッケン学園の管理地ということもあり、
森でありながら進むべき道は整備されており迷う事もなかった。
ダイ「結構敵が強いけど……この調子なら今日中にはつけそうだね。」
ロビン「案外、このままドラッケンゴーレムとやら見つけて倒せちゃったりしてな。」
あっちゃん「そうかもね~」
ヒルター「やはりあの時のレベル上げは効果的だったということか。寄り道をして正解だったな。」
リュー「……」
ヒルター「ん? リュー。どうした?」
リュー「……え、ああ。……ごめんなさい。ちょっと。気になることがあっただけで。」
ヒルター「……」
リュー「え?」
リューの反応が悪い事に気がついたヒルターはさりげなくリューの腕を引く。
それと同時に歩くペースを落とし、3人との距離を離した。
そして改めてリューに向きなおした。
ヒルター「なんだ? いってみろ。」
リュー「……」
ヒルター「何か心配なんだろう? 話して欲しい。」
リュー「……心配させないように言わないでおこうと思ったんだけど……黙ってて、心配かけてたら一緒ね。気のせいかもしれないけれど、ナーシャの様子、おかしくないかしら?」
ヒルター「ん? いつも通りだろう。そもそも必要以上に喋らないしな。彼女は。」
リュー「そう、なんですけど。そうなんだけど……」
ヒルター「気になるなら声をかけてくるといい。……だが、パーティーメンバーをよく見ているよな、リューは。オレも見習いたいものだ。」
リュー「ヒルター様に誉められるなんて……! これはうん。ナーシャに感謝よ! それも含めて行ってきます! あ、ロビン達にはきちんと報告しておかないと。」
ヒルター「……すこし、本音が漏れたな。まあ。リューも少しぐらいはしゃぎたいよな。」
最後衛にいるナーシャのところまでかけていくリュー。
その様子を見てヒルターは再び歩くペースを上げ、前の3人と合流した。
リュー「ナーシャ!」
ナーシャ「何?」
リュー「……いや、何って言われると特にないのだけれど。」
ナーシャ「そう。」
リュー「……何か、不機嫌になるようなこと、あった?」
ナーシャ「別に。」
リュー「その割には、不機嫌よね、貴方。」
ナーシャ「そう思っているなら、ロビンも感じているはずじゃないかしら?」
リュー「あ、そういわれてみればそうよね。貴方を一番見ているのは彼のはず……じゃあ、アタシの本当、おせっかい? ドラッケンについた時に改めて聞くべきだったわね。ごめんなさいね。」
ナーシャ「ドラッケン?」
リュー「え? ええ、そうよ。どうしたの?」
ナーシャ「……ダメよ。」
リュー「え?」
あっちゃん「……ヒルター様、リューは?」
ヒルター「ナーシャの様子を見に後ろへ。……どうした?」
あっちゃん「……リュー……わたしにいってくれればよかったのに……」
ヒルター「どういうことだ?」
あっちゃん「ヒルター様、さっきリューと話してたこと……それってナーシャがおかしいって、いってたんですよね?」
ヒルター「? ああ。だが……」
あっちゃん「あの子が何でここに入ってから回復魔法使わないか。考えてました?」
ヒルター「特段致命傷は受けていないから温存しているんじゃないか?」
あっちゃん「……あの子は心配性だからすぐに回復魔法使ってたじゃありませんか。多分、それが気になったんだと思いますよ。」
ヒルター「!」
あっちゃん「ロビンくんもそこまでは気がつかないと思うわ。だって自分がヒールかけてもらうシーンなんて滅多にないもの。あの子は基本的に後衛だから。そして一番ヒールかけてもらっていた比率が高かったのは……」
ヒルター「……前衛かつ、味方をかばうを回数の多い、リュー……」
あっちゃん「わたしもおかしいな~ ぐらいは感じてましたけど、リューも心配性だから……ヒルター様。ちょっとロビンくんとダイくんお願いします。少し様子を見てきます。」
ヒルター「いや。」
あっちゃん「ですが。」
ヒルター「仲間のことだ。オレもいく。いや、ロビンも、ダイもだ。」
あっちゃん「……そうですね。そうでなければ、ヒルター様じゃありませんよね。行きましょう。」
あっちゃん(手遅れになる前に。)
ロビン「ん? あっちゃんさんにヒルター? どうしたんだ?」
あっちゃん「ロビン、リューは後ろ?」
ダイ「うん。さっき、ナーシャさんに声掛けてくるって……後ろにいったよ。」
ロビン「そういや、今日はあまり声掛けてくれないんだよな、ナーシャ。リューさん、それが気になったんだろうな。」
ダイ「うん、そうだね。」
ヒルター「……自分から声は掛けなかったのか?」
ロビン「……それは。その。」
ダイ「ちょっとこっちから積極的に声掛け辛い事情があって、その。」
あっちゃん「……とにかくリューは、ナーシャと一緒に後ろに、間違いなくいるのね。」
ロビン「ちょっと! あっちゃんさん!」
リュー「何……さくやの時といい、アタシはエルフと相性悪いわけ……? いや、というか、何よ、それ……」
ナーシャ「……」
ナーシャの後ろには黒い瘴気をまとう精霊。
精霊はリューに対して痛烈な一撃を放つ。ナーシャは微動だもしない。
リュー「ちょ、っと。どういう、こと、なのよ……ナーシャ、それは、貴方の、意思なの……?」
その一撃を受けリューは、完全に気絶してしまう。
あっちゃん「リュー!」
ヒルター「な!?」
ロビン「なんだ、これ……いや、なんだあれ……」
ダイ「ナーシャさん!? その、精霊は……」
ナーシャ「……」
あっちゃん「ナーシャ、どういうつもり? 何でリューを襲ってるのよ?」
ヒルター「……理由を、聞きたいな。」
ダイ「ふ、2人とも落ち着いて! 何もナーシャさんがやったと決まったわけじゃ」
あっちゃん「じゃああの精霊はなんで手前にいるナーシャを狙わないのよ? おかしいでしょ!」
ダイ「そ、それは……」
ロビン「みんな待った……ナーシャ、聞こえてるか?」
ナーシャ「……」
ロビン「……聞こえてないっぽいな。なあ、あっちゃんさん、ヒルター。ナーシャは、こんな不意打ちみたいな事、する奴じゃないよな?」
あっちゃん「……なるほどね。ちょっと頭に血が上っちゃってたわ……そういうことなら納得よ。」
ヒルター「あっちの化け物に操られているということか!」
ロビン「可能性としては一番高そうだろ? なら、やるべきことは1つさ。あの精霊を倒しちまおうぜ!」
ダイ「ロビンの言うとおりだね……でも、あれの相手、4人で大丈夫なのかな……」
あっちゃん「ナーシャちゃんがあっちの化け物の加勢でもしない限りは勝ち目はあるわ。ダイくん、魔法壁お願い。」
ダイ「は、はい!」
ダイは4人を守るように魔法壁を張る。
それを見たあっちゃん、ロビンの2人はそれぞれ独特の構えを取る。
あっちゃん「これだけで終わらせるわ……」
ロビン「……ああ、何がなんだかわからないが。まずはリューさんの敵討ちだ!」
あっちゃん「鬼神斬り!」
ロビン「疾風!」
2人の多段攻撃が精霊に綺麗に決まり飛散した。
あっちゃん「あっけなかったわね……」
ロビン「よし。あっちゃんさんはリューさんを。俺はナーシャを」
ナーシャ「……」
ロビン「え?」
ナーシャはロビンに向け槍を突く。
突然のことで避けきれずに腕を掠めた槍はすぐに引かれ更にもう片方の槍で突かれる。
ロビンは2度目の突きを何とか受け止めるもののそのまま押し倒されてしまう。
上から下へと力を込め、さらに重力まで乗せられた槍がどんどんとロビンの胸に近づいていく。
ロビン「ナーシャ……これはちょっと、悪い、冗談、だろ?」
そして、とうとうロビンの体に槍の刃先が接する。
しかし血がにじみ出てきた所でふと力が緩んだ。
ナーシャ「……何で、隠して……」
ロビン「え?」
ナーシャ「……だ、めよ。押さえ、きれ……」
ロビン「ナーシャ!?」
あっちゃん「このっ!」
槍が更に深くロビンの体に突き刺さる寸前に割って入ったあっちゃんの蹴りがナーシャの槍をロビンから引き離した。
あっちゃんは倒れこんでいるロビンを強引に投げ飛ばしナーシャから引き離す。
あっちゃん「大丈夫!? ナーシャ、これはどういうことよ!」
ナーシャ「……」
ロビン「まった、あっちゃんさん……どうも、本人の意思じゃ、ないみたいだ……さっき、押さえ、られないって言った……」
あっちゃん「え?」
ロビン「だから、俺がやるべきことは……ナーシャ、聞こえるか?」
ナーシャ「……」
ロビン「……返事はしなくていい。しなくていいから。すこしだけ、我慢していてくれ。」
ロビンはそういうと再び疾風の構えを取る。
ダイ「ま、まさか……ロビン! 本気でナーシャさんを撃つの? ロビンはそれでいいの?」
ヒルター「……これしか、方法がないのか……? それに、お前がやる必要もないんだぞ。」
ロビン「……俺じゃなきゃダメなんだ。」
ロビンはそういうと素早く3回、弓矢を放つ。
ナーシャは防御こそするものの避けることなく攻撃を受け、倒れかけたところをあっちゃんが素早く支えに入った。
あっちゃん「……この子も、さっきのは避けようと思えば避けれたのにね。全部まともに受けきるなんて……ロビンくん、貴方の声は通ってたのかも。」
ロビン「そうだといいけど……あっちゃんさん! ナーシャの様子が!」
あっちゃん「! な、この黒い霧は!?」
ナーシャの体から黒い霧が発せられたかと思うとあっちゃんの体にまとわりついた。
あっちゃん「な、これ。……まさ、か。」
ロビン「あっちゃんさん!」
あっちゃん「きちゃだめよ!」
ヒルター「何をいっている!」
あっちゃん「わたしは、平気よ。」
あっちゃんはそういうと黒い霧を振り払う。驚くほどあっけなくその霧は飛散した。
ダイ「……なんだったんです、あれは……」
ヒルター「あっちゃん、本当に大丈夫なのか?」
あっちゃん「別に全然大丈夫ですよ~ ……早く、リューとナーシャちゃんを町に。」
ロビン「そうだな……まだノイツェハイムからそれほど離れてない。戻ろう!」
おまけ
ヒルター「ロビン、オレが代わりに運ぶぞ?」
ロビン「何いってやがる。ナーシャは俺が運ぶんだ。」
ダイ「こんなことで喧嘩してる場合じゃないよ!」
あっちゃん「二人で運べばいいじゃない! ダイ、さっさとそっちまとめなさい。わたし先に行くわ。」
ダイ「あっちゃんさん、リューさんを一人で運ぶのは大変ですって! それこそ男手借りた方が……」
ヒルター・ロビン「……」
ロビン「ヒルター、手伝ってやれ。ナーシャは軽装だしそもそもが軽い。リューはかなり重装だったはず……」
ヒルター「……ああ、すぐについてこいよ。」
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