物語の序盤重大イベントとなる2更新分です。お楽しみください。
フローライト「どうぞ。毒なんて盛ってないから、安心してよ?」
カスミ「あたし、コーヒー嫌い。」
フローライト「そうだったの。ごめんね、ここの喫茶店、お勧めがこれしかなくて。まともな飲み物がないんだよね。」
カスミ「いいよ……店員さんごめんなさい! ミルクください! できればこれと同じ分量で!」
フローライト「……どうやって、飲む気なの?」
人気の少ないドラッケン学園から少し出たところにある喫茶店。
銃を「人質」に取られているカスミは仕方なくフローライトの話を聞くことにした。
そして、会う場所として指定されたのがこの喫茶店であった。
カスミ「話は手短に。何でか最近、ローズちゃんがやたらあたしに絡んでくるからこうやって2人きりなんてそれほど時間取れないよ?」
フローライト「そうか、嫌ならやめさせるけど?」
カスミ「というか、本当にお兄さんなの? ローズちゃんは一切言わないけど。」
フローライト「僕は嫌われているからね。」
カスミ「……ふーん。ローズちゃんにも心底嫌いなものって、あるんだ。」
フローライト「その言い方、すこしわかるなーって感じの言い方だね? やっぱり僕のこと、嫌いかな?」
カスミ「あたりまえ! ……あたしに人を殺す覚悟があったなら……あたしは貴方を殺してる!」
フローライト「覚悟がなくてよかったよ。そうでなければこうしてここで話していることもできなかったしね?」
カスミ「で、話って?」
フローライト「……勘違い、の話だよ。僕は確かに君のお母さんを殺すように君の父親を唆したよ? でもさ。」
カスミ「ならやっぱり聞く意味ないじゃない。」
わざわざ喫茶店の人にジョッキを頼みそのジョッキにコーヒーとミルクを移し、
脇にあった砂糖をスプーンでいれ、棒でかき混ぜ始めるカスミ。
フローライト「落ち着いて。でもさ。僕だって好きでやったんじゃないんだよ。命令だったんだよ?」
カスミ「でも殺したのは変わらない。」
フローライト「それに。加担してたのは僕だけじゃないよ?」
カスミ「それは理由にならないよ。」
フローライト「……ローズだって共犯さ。」
カスミ「……え?」
カスミは、コーヒーをかき混ぜるのを、やめた。
フローライト「どうして、ローズは自分のことを話さないんだと思う? どうして、素性を隠すんだと思う? ……特に、君に。」
カスミ「特に、あたし、に?」
カスミ(言われてみれば……ローズちゃんのこと、ゆづき先輩は少し、わかっているような態度だった。さくや先輩も……あたしにだけ、隠してる? あたしにだけ、隠さなくちゃいけないことがある?)
フローライト「ねえ、本当の友達ならさ。自分が隠し事してることぐらいは話さない? それすら、してないんだろう、ローズは。」
カスミ「それは……そうかも、知れないけど。」
フローライト「僕は一応、ローズの兄だよ? 知っていることもあるよ? 君が望むなら、話すよ? 君の誤解が、それで解けるなら。」
カスミ「でも、それが、主題じゃ」
フローライト「でも、気にしているよね? そんな状態で、いいの? 集中、できないんじゃないかな?」
カスミ「集中できないのは他の理由だよ!」
フローライト「この銃? きちんと返すよ。話を聞いてくれたなら、ね?」
カスミ「……」
再び、カスミはコーヒーをかき混ぜ始める。
しばらく、沈黙が続く。
そしてカスミが、コーヒーを混ぜる仕草をやめた。
カスミ「……ねえ。」
フローライト「何?」
カスミ「ローズちゃんが、何してたのか。教えて。具体的に、ごまかさずだよ?」
フローライト「……いいよ。」
ローズ「……なんで、カスミちゃんと、馬鹿兄が……どうして?」
喫茶店の窓の外。カスミとフローライトが主題に入ったちょうどその時。
ローズは、この密会を目撃してしまったのであった。
おまけ
フローライト「しかし何でジョッキなんて頼んだの?」
カスミ「だって、これじゃないと多分、はいらないだろうなって……」
フローライト「最初からミルクをあんな大量に頼まなければよかったんじゃ……」
カスミ「本当はもっと入れたかったぐらいなんだけどな。ほら、コーヒーのブラックって苦いじゃん? コーヒーってミルクの量で大分味変わるしこれなら大丈夫かなーって……」
フローライト(……ミルク、好きなのかな、この子は。)
----↑ここまで↑----